時短営業後に「困窮者へ無料弁当」飲食店の思い 「夜も暇になるし、1日6万円の協力金は多い」

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こうした活動が注目され、2月21日に近隣の赤羽公園であった食品の無料提供会「北区フードバンク」(主催は民間)に声をかけられ、飲食店として唯一参加した。用意した50食分の無料弁当は30分でなくなった。

2021年2月21日、近隣であった「北区フードバンク」の様子。めぐりやを含め、用意した食料がすぐになくなり、追加の2回目が行われた(写真:弁護士ドットコム編集部)

活動は口コミで広まり、新たに弁当を求めに来た生活困窮者もいる。ある高齢女性は、病院で話を聞いて、今ではめぐりやの無料弁当で毎食をしのいでいるという。

それぞれに事情があるから、複数個持っていくからと言って、とがめることはない。“自助”をしていることは痛いほどわかっているからだ。

無料弁当で生まれた会話、区議を通して支援につなげる

3月に入ってうれしいこともあった。

「赤羽からホームレスの人が2人減りそうなんです」(哲男さん)

どちらも無料弁当を通して、少しずつ話をするようになった男性だ。地元区議や支援者につなげ、1人は住居を確保することができた。もう1人も約20年という路上生活の末、ついに生活保護を申請した。

「本当に人それぞれ、いろんな事情があるんですよ。生活保護があるじゃないかと言っても、何度も断られて、役所不信になってしまった人もいるし、扶養照会で親や子どもに知られたくないという人もいるんです」

無料の弁当は、日数をかけて受け取った人の心をほぐし、専門家のアドバイスに耳を傾けるきっかけをつくった。“共助”から“公助”への掛け橋と言えるかもしれない。

ただ、哲男さんはこうも考える。

「“公助”は申請主義でしょ。知らないとできないのに、広報の仕方は家があることが前提になっていますよね。

しかも、『自粛してください』『自分で努力して下さい』というメッセージばかりで、『生きていてください、生き延びてください』というメッセージがあまりにも少ないように感じます」

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