時短営業後に「困窮者へ無料弁当」飲食店の思い 「夜も暇になるし、1日6万円の協力金は多い」
まずは実態調査から、とアドバイスされ、おにぎり配りをはじめた。
「地元の区議さんや、うちでやっている『子ども食堂』に来る子どもたちが同行してくれることもあります」(弥寿子さん)
新年早々に亡くなったホームレス男性
2020年12月末からは、店先に食料やカイロなどを出すようになった。
そんな矢先、転機となる事件が起きた。年明けすぐ、顔見知りのホームレス男性が亡くなったのだという。
「1匹狼みたいな人で、おにぎりも絶対に受け取らなかった。でも毎日、見かけていましたし、ばあちゃんを通して、様子は聞いていたんです。押し付けてでも何か食べさせるべきだったのかな、なんて思うこともあって…」(弥寿子さん)
1月7日に緊急事態宣言が出てからは、営業が早く終わるのを利用して、本格的に弁当をつくるようになった。店の定休日でも、弁当作りは1日たりと休まなかった。
息子の哲男さん(42)はこう説明する。
「うちじゃ、あまり効果はないかもしれないけど、農家の人も困るだろうから、仕入れ量は減らしていません。夜も暇になるし、少しでも人助けになるならと。大きな店ならそれでも足りないのでしょうが、正直な話をすると、うちの規模だと1日6万円の協力金は多いというのもあります」
無料とは言っても、夜はまだ寒い。
「弁当はすぐに冷めてしまうし、嫌いなものが入っているかもしれない。ここまで取りに来るのって、結構ハードル高いと思うんですよ。それくらい困窮しているんじゃないかなって」