「水没危機の町」が今迫られている大きな決断 アメリカの小さな町に押し寄せる増税地獄
ノースカロライナ州沖にアウター・バンクスと呼ばれる細長い半島のような地域がある。このアウター・バンクスを擁するデア郡のボビー・オッテン郡長官は最近の集会で悪いニュースを2つ伝えた。同地域で数百人が定住する町エイボンは、幹線道路の水没を防ぐために少なくとも1100万ドル(約12億円)を何としてでも用意しなければならないというのが、1つ目の悪い知らせ。
そして、この原資の一部とするため、郡はエイボンの固定資産税を引き上げたいと考えており、場合によっては50%近い増税になるというのが2つ目の悪い知らせだった。
住宅保有者は、道路をめぐる状況が切迫しているという点にはおおむね同意したが、増税にはかなりの難色を示した。
町を守る費用を負担するのは誰?
町を守る費用を誰が負担するべきか。住民はオッテン氏に次のような考えを伝えた。連邦政府、州政府、郡内の他の地域、観光客、観光客相手に物件を貸している人たち……。要するに、自分たち以外の誰か、というわけだ。これに対し、オッテン氏は同じメッセージを繰り返した。誰も助けに来てはくれない、頼れるのは自分たちしかいない、というメッセージだ。
「今すぐに行動しなければならない」とオッテン氏は言った。
エイボンのような小さな町にとって気候変動の影響はとりわけ深刻だ。というのも、この町が乗っかっているのは細長い島々の間にある砂州にすぎないからである。
しかも、この砂州が面する大西洋の海面は上昇し続けている。海面の上昇と嵐の強大化が進む中、エイボンの住民が直面する問題はアメリカのほかの海岸地帯にとっても無視できないものになりつつある。人々が何世代にもわたって生活を築き上げてきた町、地域、そして故郷を守るのに、どれほどの資金をかけられるのだろうか。
答えは地域によって異なる。マイアミ、タンパ、ヒューストン、サンフランシスコといった地域の自治体は借金したり、増税したり、水道料金を上げたりして資金をつくりだしている。