「水没危機の町」が今迫られている大きな決断 アメリカの小さな町に押し寄せる増税地獄

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当局によれば、アウター・バンクスでは観光客向けのビーチが場所によっては年間14フィート(約4.2メートル)を超えるペースで浸食されている。同地域の他の町では、エイボンが現在検討しているような増税措置はすでに導入されている。

ところが、このような増税を行っても、エイボンには海面上昇との戦いに勝利できる望みは薄いように見える。エイボンは最も高い場所でも海抜数十フィートしかなく、住宅、主要道路のほとんどが海辺に面しているからだ。

「現在の姿はいずれ失われる」

「海面上昇について私の把握している科学的データによれば、アウター・バンクスの現在の姿はいずれ失われる。正確なタイミングはわからないが」。そう語るのは、エイボン周辺を取り巻くケープ・ハッテラス国立海浜公園など、ノースカロライナ州東部で国立公園の管理者を務めているデビッド・ハラック氏だ。

現在のエイボンは主に観光産業で成り立っている。海沿いにはTシャツ販売店と、こけら葺きの高床式邸宅が立ち並ぶ。数ブロックほど内陸に入ると、質素で古い家の集まったヴィレッジと呼ばれる場所がある。エイボンで生まれ育った住民のほとんどが、このヴィレッジで暮らしている。

オードリー・ファローさんの祖母はエイボンで育ち、1800年代後半に漁師として町に越してきた祖父と出会った。74歳のファローさんは、母がそうだったように、自らが生まれ育ったこの土地でずっと暮らしてきた。

ファローさんは先日、自宅のポーチに立ち、自身が生きてきた間にエイボンがどう変化したかを話してくれた。行楽客や別荘を購入する人々は町に新たなお金をもたらしたが、地元住民は町の外に押しやられたという。

海も変わってしまった。海面が上がり、洪水が頻繁に起きるようになった。今では強い風が吹くだけで、自宅近くの小さな道や自宅の庭に海水が入り込むようになった。「そこに雨が加わったら、それこそ海の真ん前の家で暮らしているような気分よ」とファローさん。

どう考えても、エイボンには終わりが近づきつつあるようだ。

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