「水没危機の町」が今迫られている大きな決断 アメリカの小さな町に押し寄せる増税地獄

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アウター・バンクス沿いのエイボンやその他の町を本土とつなぐ2車線の幹線道路「12号線」が、過去10年間にハリケーンで受けた被害は6500万ドルに上る。そのため連邦および州政府は1億5500万ドルを追加支出し、もはや海面から保護しきれなくなった12号線を長さ2.4マイルの橋に置き換えようとしている。2010年以降、同地域のハッテラス島の住民が避難した回数は5回を数える。

デア郡が頼るのは「養浜」と呼ばれる保全工事だ。海岸から数マイル離れた海底から砂を採り、それをパイプラインで岸へと押し出し、浜に敷く。だが、こうした工事には巨額の費用がかかることがある。郡は連邦や州政府に資金援助を求めたが、色よい返事は得られなかった。

群に決断を迫られているエイボン

郡は地元の資金を使い始めており、工事費用を2つの財源で工面することにした。1つは観光客からの税収、もう1つは住宅に対する固定資産税の上乗せだ。2011年にアウター・バンクスで初めてこの手法を用いてビーチを再建した町がナグス・ヘッドだった。2017年のキティ・ホークなど、ほかの街もこれに続いた。

ナグス・ヘッドの長、ベン・カフーン氏は、海に沈む浜辺の家をすべて買い上げるのに比べたら、数年に一度、2000万ドルを支出してビーチを再建したほうが安上がりだという。

カフーン氏によれば、養浜をあと2〜3回繰り返せば、ナグス・ヘッドの寿命は20〜25年ほど伸ばせる可能性がある。ただ、その後どうなるかは何とも言えない、とも言う。

そしてデア郡は今、エイボンに決断を迫っている。エイボンのビーチは場所によっては年間6フィートを超えるペースで浸食されていっているからだ。

先月の集会で、オッテン氏はエイボンが対策を講じなければならない理由をこう説明した。ビーチの浸食が進めば、小さな嵐でも12号線が冠水する。いずれはハリケーンで12号線が水没して通行不能となり、エイボンは何週間、あるいはそれ以上、孤立することになる——。

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