コロナ患者「拒否ではない」民間病院切迫の現実

「病院名公表」に感じる大きな違和感

コロナ禍でより逼迫している医療現場の実情(写真:Graphs/PIXTA)

3月21日をもって首都圏1都3県の緊急事態宣言が解除されたが、コロナ感染者数は一進一退が続き、医療現場の疲弊という問題も何も変わっていない。

そうした中、現場を戸惑わせているのが、2月13日に改正・施行された、感染症法と新型インフルエンザ等対策特別措置法、検疫法だ。法改正により、行政は新型コロナウイルスに感染した患者の受け入れを病院に勧告できるようになった。ほか、コロナ患者が入院勧告を拒否したり、飲食店など事業者が正当な理由なく休業・時短営業の要請に応じないなどのケースに罰則が設けられた。

本稿では、改正特措法の「正当な理由なく患者を受け入れない場合は病院名の公表も可能となる」ことにフォーカスしたい。

そもそも、コロナ患者を受け入れられるベッド数があったとしても、医師や看護師など医療従事者の人員や経験値などを含めた体制の問題で受けられない場合もあるのではないか。直接コロナ患者を受け入れる病院だけでなく、今、医療現場が抱える過酷な労働環境について、改めて考えてみたい。

月80時間の時間外労働の現実

「新型コロナウイルスの感染が拡大する前から医療現場は疲弊しています。コロナで苦しい状況でも現場は必死にやっている。看護師や介護職の負担が大きくなって追い詰められるのは、娘のことからも心配です」

新人看護師だった娘の杉本綾さん(当時23歳)を亡くした母が、コロナで一層疲弊する医療現場の状況を懸念する。綾さんは北海道札幌市にあるKKR札幌医療センターで働いていた。夢だった看護師になってわずか8カ月後の2012年12月、自ら命を絶った。

綾さんの配属先は、高度な技術を要する重症患者が多い呼吸器センターだった。入職後、早いうちから担当の患者を受け持ち、どんどん帰りの時間が遅くなっていった。平均的に月80時間という時間外労働が続いたうえ自宅でも仕事せざるをえず、睡眠時間が2時間程度という状況が続き、実家を出て病院の近くで1人暮らしをして仕事をこなした。

初めての夜勤でミスし、その後にうつ病を発症しての自死だった。綾さんの死についての労災申請は当初、不支給処分とされたことから母が認定を求め提訴。札幌東労働基準監督署は再調査を行い、綾さんが自宅に持ち帰った仕事を労働と認めて2018年10月に不支給処分取り消しを行い労災が認定された。

綾さんの母には、コロナ禍のなかで奮闘する看護師の姿と、ありし日の娘が重なって見える。

「1回のシフトで20時間以上も看護師が働いているような実態があると聞いています。コロナ患者の対応は、呼吸するにも息苦しいはずの防護服を着ての看護なのですから、休憩時間を含んでも1日8時間が限界ではないでしょうか」

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