コロナ患者「拒否ではない」民間病院切迫の現実 「病院名公表」に感じる大きな違和感

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疲弊する看護現場の状況に加えて、コロナ患者の対応を困難にしているのが、国が進める「地域医療構想」だ。厚生労働省が都道府県に対して、医療の需要と供給体制について「地域医療構想」の策定を求め、病院の再編を迫った。それにより、命に関わる患者をみる「急性期病院」や、公立病院、日赤などの公的病院が減らされてきたこともコロナ対応に影響している。

緊急事態にもコントロール可能な構想が必要

コロナ患者をみることができるような「高度急性期病床」は、2015年の16万9000床から2018年は16万床に減っている。地域医療構想では2025年の高度急性期病床の必要量は13万1000床とされている。

厚生労働省の「医療機関の新型コロナウイルス感染症患者の受入状況等について」を見ると、2020年11月末時点での経営主体別のコロナ患者の受け入れ可能な病院数と割合は、公立病院が495施設(公立病院全体のうち71%)、公的病院が619施設(同83%)、民間病院が593施設(同21%)となっている。

人口100万人以上の区域でコロナ患者を受け入れ可能な病院の52%が民間病院で、人口10万人未満の区域では公立が56%を占めている。受け入れ実績を見ると、人口100万人以上の区域では、公立病院が82%、公的病院が85%と高水準の一方、民間病院が24%にとどまる。人口10万人未満の区域では、公立病院が46%、公的病院が72%、民間病院が11%で、いずれも民間病院の受け入れの少なさが目立つ。また、全体として医師や看護師の人数が多い病院ほど受け入れ実績が高くなっている。

このような状況について、社会保障審議会医療部会の委員を務めた連合総研の平川則男・副所長は、こう話す。

「感染症の流行について誰も予想できなかったこととはいえ、問題は”不採算”と呼ばれる医療について十分に議論を尽くしてこなかったことにあります。似たような診療を行う民間病院が近くにあるなら、公立・公的病院を統廃合しようというのが地域医療構想ワーキング・グループの議論でしたが、コロナ患者が多くなったとき、実際に多くの患者を最初に引き受けたのは公立と公的病院でした。公立・公的病院の存在意義を改めて考え、コロナの治療のような高度な医療が必要なとき、民間病院も含めた医療体制をコントロールする仕組みが必要なのではないでしょうか」

コロナ患者の受け入れについては、「拒否」というより「困難」という側面が強いのが実状だろう。平川副所長は「高度急性期医療は『人』が担う。医師や看護師をどうやって集中して配置するかを考えなければなりません」としている。

受け入れられる状態で拒否することと、現場が逼迫していることで断ることは意味が違う。改正特措法によりコロナ患者の受け入れを拒否した場合の病院名公表を考えるうえで、改めて医療現場の労働実態にも目を向けることが必要だ。

小林 美希 ジャーナリスト

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こばやし・みき / Miki Kobayashi

1975年、茨城県生まれ。株式新聞社、週刊『エコノミスト』編集部の記者を経て2007年からフリーランスへ。就職氷河期世代の雇用問題、女性の妊娠・出産・育児と就業継続の問題などがライフワーク。保育や医療現場の働き方にも詳しい。2013年に「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。『ルポ看護の質』(岩波新書、2016年)『ルポ保育格差』(岩波新書、2018年)、『ルポ中年フリーター』(NHK出版新書、2018年)、『年収443万円』(講談社)など著書多数。
 

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