コロナ患者「拒否ではない」民間病院切迫の現実 「病院名公表」に感じる大きな違和感
北海道医労連が昨年11月から12月にかけて行った「道医労連コロナ禍で働く看護師さんへの緊急アンケート」(回答数305)では、「今働いてつらいこと」のトップが「精神的負担」(73.4%)、2位が「身体的負担」(65.2%)だった。精神的負担の内容で多かったのが感染不安や恐怖で、身体的負担では人員不足だった。また、PCR検査を受けたいと88.5%が答えた。
札幌市はこの3月から半年間、高齢者施設や療養病床のある病院の職員を対象に月1回のPCR検査を実施するが、一般的な病院は対象外となっている。
「患者さんも家族も、看護師はPCR検査を受けて陰性だから働いているものと思っていますが、そうではありません。看護師など医療従事者はもちろん、患者家族もPCR検査を気軽に受けることができれば、家族も面会できるようになるのです。看護師にとって、普段どおりの看護ができないことが苦しくなっています」(鈴木委員長)
そして、鈴木委員長は「感染予防のため患者家族が面会禁止になっていることで、業務が増えるジレンマを現場が抱えている」と話す。お見舞いの品や着替えの受け取りなどをスタッフがせざるをえない。家族に会えないことで患者の気持ちが落ち込むこともあり、リモート面会を行うと、患者と家族に1人ずつスタッフがつくため、人手が取られてしまう。患者家族への病状説明は15分以内というケースもあり、患者が亡くなりそうなときでも家族が面会できないこともある。看護師もまた、納得できる看護ができずにいる。
まだまだ知られていない現状を現場から伝える
このような現状を多くの人に知ってもらおうと北海道医労連は、フローレンス・ナイチンゲールにちなんだ5月12日の看護の日に向け、2月1日から100日後である5月12日までの間、「#100日後に一揆する看護師」プロジェクトをスタートした。ツイッターで動画も駆使し、看護師の生の声を伝えている。
「患者さんを直接診ないで電話対応だけで処方することがずっと続けば、診察に責任が持てなくなります。やっぱり診てみないと、となると玄関の所で診たりしますが、患者さんの人権がどうなのかと感じます」(訪問看護の看護師)
「年を越す前に手術したかった(という患者さんがいて)、みんな申し訳ない思いです。外来に来たときに謝罪したりもしながら対応をすすめ、歯がゆい思いをしました」(手術室の看護師)
こうした声を受け鈴木委員長は、「自己犠牲で医療は成り立ちません。医療、介護で働く全員へのPCR検査はもちろん、市民も検査を受けやすくすることで、無症状の陽性者を早期発見して感染拡大を防ぐことが必要です。病院の減収補填もなければ、コロナ患者の受け皿を増やすことは難しい。そして何より、医療や介護労働者の処遇改善と増員が不可欠です」と訴える。
何十年も前から慢性的に看護師は不足し、現場は疲弊している。日本看護協会が調査している離職率を見ても、つねに10人に1人が辞めている状況だ。日本医療労働組合連合会の「2017看護職員の労働実態調査結果」(回収枚数3万3402枚)でも、看護師の約7割が健康に不安を抱え、慢性疲労状態で勤務し、鎮痛剤などの薬を常用している状態だ。これでコロナ患者を受け入れる人員体制が整っていると言えるだろうか。
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