肛門科医「お尻拭くのは3回まで」と唱える理由 拭きすぎはお尻の薄い皮膚に負担が大きすぎる

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座浴の方法は、いたって簡単です。準備するものは、大きなタライまたは浴槽とぬるま湯です。まずタライまたは浴槽にぬるま湯を張ります。浴槽の場合、ぬるま湯はお尻が浸るくらいの量でいいです。

次にお尻をぬるま湯につけ、パチャパチャと汚れを洗い落とします。このとき、お尻の穴のまわりをこすったり、ボディスポンジやボディタオル、せっけんなどを使ったりしなくても汚れは自然と落ちます。タオルでお尻を拭く際も、こすらずに優しく押さえ拭きにしましょう。


1.大きなタライにぬるま湯を張る
※浴槽にお尻が浸かるくらいぬるま湯を張るのもOK

2.お尻をぬるま湯につけ、パチャパチャと汚れを洗い落とす

 

排便後、何度拭いても紙に便がついている方は、スッキリ排便ができていない、つまり出残り便が原因の可能性があります。温水洗浄便座を使って洗浄することはできる限り控え、座浴をするようにしてください。

スムーズな排便ができる姿勢

排便後のお尻の拭き方や座浴の方法をお話ししましたが、便をスッキリ出しきれればお尻を拭いた際、便が紙につきにくくなります。

スムーズな排便の姿勢としてよくおすすめされているのが、ロダンの「考える人」のポーズです。この姿勢をとると、直腸と肛門の角度が真っすぐになるので、便が出やすいからです。医学的にも根拠のある排便に適した姿勢です。

しかし、来院される方の中には、「考える人」のポーズだとかえって便が出にくい、便が残っている感じがすると訴える方がけっこういらっしゃいます。

実際に、肛門から指を入れて診察すると、直腸と肛門の角度や腸の大きさ・形は十人十色なのです。そのため「考える人」でなくても、あなたの出しやすい姿勢があればそれがあなたに適した排便の姿勢となります。

「考える人」の姿勢で便が出にくい人は、足の裏全体が床にしっかりつくようにして、下半身を脱力してみるとよいでしょう。足の裏全体が床につかない場合は、足台や段ボール箱などで高さを調節してみてください。

かかとが浮いていると、脚自体に力が入ってしまうため、余計な力を抜いてリラックスした状態が大切です。「考える人」の姿勢では便がスムーズに出なかった患者さんたちから、この方法を試してみるとスムーズに排便できたとご報告もいただいております。

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スムーズな排便には、姿勢が関係しているので、このように自分に適した排便の姿勢を見つけることをおすすめします。

テレワークだとあまり時間を気にせずトイレに入りやすいものです。便がスッキリ出ないから出るまで待ってみたり、スマホや本を持ち込んで排便している間に数十分経っていたりしますが、それはお尻にとっていいことではありません。

お尻がうっ血し、無意識にいきんでしまっていることもあり、お尻に負担がかかります。そのため、痔などのお尻のトラブルを引き起こす可能性が高くなるのです。スムーズな排便であまり時間をかけずにトイレから出ることが大切です。

佐々木 みのり 肛門科医/大阪肛門診療所副院長

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ささき みのり / Sasaki Minori

大腸肛門病専門医・指導医。大阪医科大学卒業後、大阪大学医学部皮膚科学教室入局。4年間、皮膚科医として勤務後、1998年より肛門科医に転身。同年7月に肛門科女性外来を開設。

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