フリードがシエンタより売れるようになった訳 グレード毎に異なるキャラクター設定の妙
シエンタ(3列シート車)とシエンタ ファンベース(2列シート車)にも、「グランパー」というアウトドアを意識した特別仕様車がある(いずれもガソリン車とハイブリッド車を用意)。やはり専用のフロントグリルやドアハンドル、ホイールなどを採用した仕様だ。だが、トヨタの販売ディーラーによると、グランパーは「さほど売れていない」という。トヨタの場合は、コンパクトSUVの「ヤリスクロス」や、ダイハツ「ロッキー」のOEM車「ライズ」の販売が絶好調のため、アウトドアテイストを持つモデルが欲しいユーザーはそれらを選択するのだろう。
フリードの勝因は2列シート車の健闘
両車の売れ筋は、いずれも3列シート車であることはすでに述べたが、2列シート車のフリード+も、一定数の需要はあるようだ。これもホンダ販売ディーラーの話だが、「キャンプなどのアウトドアユースで多くの荷物を積みたいとか、車中泊をしたいといった使い方が決まっている」ユーザーは、最初からフリード+を「指名買いする」という。
ちなみにフリード+は、スタンダードのフリードとリアゲート開口部のサイズが異なる。荷室高がフリードの1110mmに対し、フリード+は1255mmで、開口部地上高もフリードの480mmに対しフリード+は350mmと、より広く、低くなっているのだ。また、荷室を二分割できる「ユーティリティボード」下の収納スペースが広く、例えば車中泊をする際に、荷室に大人2人が橫になっても荷物を下のスペースに入れておくことができる。
シエンタの2列シート車ファンベースの場合は、荷室高が変えられる「デッキボード」を低い位置に設置すると荷室高1070mm、開口部地上高530mm。高い位置では荷室高985mm、開口部地上高610mmだ。こちらもリアゲートの開口部は広いが、ボード下スペースはフリード+ほど広くならない。2列シート車の使い勝手では、フリード+のほうに軍配が上がる。
以上の要素を踏まえると、フリードが2020年の販売台数でシエンタを打ち負かした要因には、「主力」の3列シート車だけでなく、「脇役」である2列シート車の健闘も大きかったといえる。フリード+は、スタンダードとあえてリヤゲートの開口部を変えるなど、より使う目的に沿った仕上がりにしたことが、一定数のユーザーに支持を受けているのだろう。また、クロスターといった今のSUVトレンドに合致したグレードがヒットしていることも大きい。フリードの勝利は、主力と脇役の各設定グレードがそれぞれ着実に売れたことによる総合力が、シエンタのそれを上回った結果ではないだろうか。
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