もうひとつ、浩二さんが変わったきっかけがある。昨春に尊敬していた上司が病気で亡くなったのである。まだ50代だった。「すごくいい人だったので、ショックが大きかった」。もし、自分が突然こうなったら、息子はどう思うか。毎日、夫婦がけんかをしているところを見せていいのか。考えた末に決めたのは「妻とのかかわり方を180度変える。言葉ではなく行動を変える」ということだ。
今、浩二さんは4歳になる息子と一緒に毎朝保育園に行く。月に1回はお迎えにも行く。ほぼ毎日19時か20時に帰宅し、息子と娘をお風呂に入れる。「家庭参加が面白くなってきたら、時間を作ることができるようになった」というから不思議だ。好きな遊びは「戦いですね。仮面ライダーごっことか」(浩二さん)。「息子はパパ大好きで、帰りが遅いとすねちゃうほどです」(洋子さん)。
「営業成績トップ」を武器に、定例会議を朝イチに
子どもが起きている時間に帰宅できるようになったという大きな変化。しかも転職して年収は倍近くにまで増えた。一方、飲み会の頻度は1週間から10日に1回程度までに減った。
さらに、今年初めに第2子が産まれるのを機に、働き方も大きく変えた。終電帰りをやめるため、無駄な仕事、無駄な会議を見直すことに加え、それまで毎週金曜の18時から開かれていた定例会議を朝9時45分に変えたのだ。
もともと10時始業の会社だが「朝シフト」にするため役員会議で提案した。結果は「すんなり認められました。僕が営業成績トップなので」というからカッコいい。管理職だから、変える権限があったことに加え、仕事で成果を上げていたことが家族のためにもなった。
仕事にも家庭にも正面から向き合うようになった浩二さん。変化の理由を「妻から死ぬほど正論を突き付けられたから。本当にものすごく考えました。妻は小手先とか、表面的なことが大嫌いなのです」と話す。
なぜ、あきらめなかったんですか? と聞くと、洋子さんは「あきらめてしまう妻は優しいんじゃないでしょうか。自分が家のことをやればいい、って思える。私はあきらめたら自分が大変になると思ったのです」。
洋子さんの正論主義を示す象徴的なエピソードがある。仕事で高級ブランドとの取引が多い浩二さん、ブランドものをもらって帰ってきたときのこと。「妻にあげたら喜ぶのでは」という予想に反し、洋子さんは怒った。「こんなものは、いらない。ちゃんと自分たちで稼いだおカネ以上のものは持つべきじゃない」。
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