意識高い系「自分探しの旅」が失敗しがちな理由 「外への扉」と「内なる扉」がつながるサードドア

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バナヤン氏が「外への扉」と「内なる扉」を開けていくそのピースは、失敗からも成功からも、苦しみや喜びからも、そして、かなり迷惑な思い込みからすらも、発見されてゆく。

数々の著名人へのインタビューをこなしていった終盤、天然素材のベビーケア用品販売で知られるジェシカ・アルバへのインタビューが行われ、ジェシカから奇しくもこんな言葉が飛び出す。

「誰だって生まれてくる境遇を選ぶことはできない」「あなたの生まれた家族があなたの家族で、あなたの生まれた環境があなたの環境なの。だから自分の置かれた場所でなるべく多くのものを得られればそれで十分だし、ほかの人と自分を比べる必要なんかない」

あなたの前にサードドアが現れるとき

寮のベッドの上で「自分探し」の旅を妄想し、「自分を変えてくれるなにか」に期待していた時点のバナヤン氏では、きっとまだ、この言葉の持つ意味を理解することはできなかっただろう。

だが、ハチャメチャで破れかぶれながらも、自分の直感や行動力で扉を見つけては開け続け、成長しはじめたバナヤン氏は、どうやらこの場面から、1つの答えを見出しているようだ。その感覚が、ラストへとつながってゆく。

物語の序盤では、『サードドア』というタイトルから「外への扉」「新境地へ飛び出すためのドア」あるいは「ショートカット」といったイメージや、ある種の「意識高い系」の感性を感じ取ることになり、自分とは別世界にいる、特別な人の話であるような印象を持つ人もいるかもしれない。もちろんそれも1つの面白さだ。

だが、体当たりをしながら視野を広げてゆくバナヤン氏に、どこかで自分の心を結びつけることができたとき、きっと、自分がいまいる場所で見出せること、「空の蒼さ」を1つでも多く、一段でも深く知る方法があるのではないかということに、思いを馳せることができるだろう。それが、あなたの前に現れるサードドアなのかもしれない。

泉美 木蘭 作家・ライター

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いずみ もくれん / Mokuren Izumi

1977年三重県生まれ。24歳でイベント企画会社を起業し、即刻倒産。借金返済のために働く日々をつづったWebサイトが話題を呼び、作家デビュー。以降、週刊誌やWeb媒体等で執筆。TOKYO MX「モーニングクロス」「激論!サンデーCROSS」などテレビ番組でレギュラーコメンテーターとして出演。著書に『オンナ部』(バジリコ)、『エム女の手帖』(幻冬舎)、『会社ごっこ』(太田出版)等。趣味は合気道とラテンDJ。

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