精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか

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──確かに私もアメリカでは自分の長所を隠すどころか、Sell yourself!(自分を売り込め!)の精神を教わりました。あと、日本では人と違ったことをすると、「人様に迷惑をかけるからやめなさい」と親に言われることが多いと思うのですが、英語のmake a difference(違いを見せる)は人と違ったことをしてよいといったポジティブな意味があります。大きな違いですね。

そうですね。日本では個性的という言葉がよい意味で使われないことが多いですよね。

優等生でいても、自分のやりたいことがわからない

──コロナによる影響もあると思われる中、若者はメンタルヘルスをどのように良好に改善していったらいいのでしょうか。長期と短期でいろいろと対策があるとは思うのですが。

長期的な面でいえば、やはり自分の意見をきちんと言える子どもたちを育てることが重要だと思います。私の患者さんは結構10代が多いのです。彼ら彼女らは「生きている意味がわからない」とよく言っています。

──その子たちの家庭の状況はどうなのでしょうか。

とくにそうした問題はない家庭のお子さんも多いのです。以前でしたら、家庭が崩壊している子が多かったのですが、最近はそうでもありません。

先ほどの「うっせぇわ」の曲のように、優等生でいた子は、あれしなさい、これしなさいと言われて生きてきた結果、自分が何をしたいかということに向き合わないできた子がとても多くいます。優等生で褒められて生きてきた分、なんとなく自分は何でもできると思っている場合もあります。

でも、実際には自分が何をやりたいのかが見つかっていない人が多くいます。いざ大学に入って、そのことに気づく。そして、「自分は何をしたいだろう。生きている意味って何だろう」と考えこんでしまう子が一定数いるのです。大人もそこに焦点を絞った質問をしっかりと聞いてこなかったのでしょう。

そうして、大学受験に落ちたり挫折に直面すると、どうしていいかわからなくなってしまうのです。もともと親に言われたように生きてきて、何かできると思っていたのに、失敗したときにどう改善すればよいのかがわからない。ここで、うつ病になってしまう子もいます。

──大学生に聞いても、将来何がやりたいかが見つかっていない子はかなりいるように感じます。

私の患者さんの中には10代の発達障害の子もいます。彼らの悩みの1つは、コロナでリモート環境になり、いきなり自分で予定を立てなくてはならなくなったことです。

大学に通学していれば、授業がコマになっているし、友達がいるので「次の授業は一緒に受けようね」といったふうになる。授業を決めるときも友達と相談しながら、決められる。

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