精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか

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でも、いざリモートになると、人と相談もできず、全部自分で選択し、計画も立てないといけない。それが苦しいというんです。

それを急になんとかせよといっても難しい面があります。そこで一緒にスケジュールを立てたりしています。そうしたところから、やっていくことなのかなと思います。

インタビューを終えて

現役医師で、キッズ・ジュニア年代のサッカー選手のメンタルアドバイザーも務められる木村好珠さん。話をうかがい、若者のメンタルヘルスを健全に保つためには、若い頃からしっかりと自己表現や自己主張ができ、長所を伸ばす教育が今の日本には必要だと感じた。子どもたちが伸び伸びと育ち、将来の夢や目的意識をしっかりと持てるような社会環境を整えていくのは、大人たちの役割だろう。

また、心が病む人々を社会で支える環境整備が重要だろう。精神科医の樺沢紫苑さんは筆者の取材に対し、「自殺の原因は心理的『孤立』『孤独』です。家族と住んでいても、あるいは遊び友達がいても、心を打ち明けられなければ『孤立』『孤独』の状態です」と指摘する。

さらに、「自殺の予防は『孤立』『孤独』の逆。つまり、『つながり』と『コミュニケーション』です。『相談』というとハードルが高くなるので、とにかく『話す』こと。それが、『ガス抜き』となり、自殺のエネルギーを減らします。今のコロナ禍で、リアルのコミュニケーション量が大きく減っている。自殺の増加につながってくるのは当然です。意識的に、人とつながっていくことが重要。SNSでのメンタル疾患の予防効果は限定的なので、特にリアルコミュニケーションによるガス抜きが重要と考えます」と話す。

コロナ禍の外出自粛下、いかにリアルなコミュニケーションの機会を確保していくか。孤立・孤独からの解放のアイデアが問われている。

NPO法人自殺対策支援センターライフリンク いのちSOS
0120-061-338
公的な相談機関につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」
0570-064-556
24時間対応の「よりそいホットライン」
0120-279-338
「いのちの電話」
0570-783-556
18歳までの子どもを対象とした「チャイルドライン」
0120-99-7777
子ども向けの相談窓口の「24時間子供SOSダイヤル」(年中無休)
0120-0-78310(なやみ言おう)
文部科学省が子どもの相談先の一覧をまとめたホームページ
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
厚生労働省が設けているさまざまな相談機関を検索できるサイト
http://shienjoho.go.jp/
高橋 浩祐 米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

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たかはし こうすけ / Kosuke Takahashi

米外交・安全保障専門オンライン誌『ディプロマット』東京特派員。英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』前特派員。1993年3月慶応義塾大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターなどを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務めた経験を持つ。

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