精神科医が語る「うっせぇわ現象」の読み解き方 若者をメンタル不調からどう守れるか

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大流行中の「うっせえわ」(画像:YouTubeより)

若者の間に「うっせぇわ」という曲がとてもはやっています。現役女子高生シンガーAdoさんが歌っており、中高生や子どもたちの間で大ヒットしています。毒々しい歌詞と社会ルールに反抗する過激さが表されています。でも、もともと「うっせぇわ」という言葉自体は上品ではないし、今すごく問題になっています。「うっせぇわ」と叫び続けていることもよくないです。

ただ、私は、この曲が日本の若者たちが抱えている、心の叫びの1つなのだろうなと思っています。曲の内容は、簡単に言ってしまうと、もともと優等生で、気がついたらそのまま大人になっていた。ルールとかマナーとかそんなの糞くらえだ! みたいな感じの曲です。

精神科医の木村好珠さん

先日Noteにも書いてまとめたのですが、昔の尾崎豊さんの時代なら、バイクを盗んで走り出すといったように行動に表すことができた。しかし、今は、親に言われるがまま優等生のように育って、自分の本音を吐き出すことが苦手な人も多い、と私は考えています。

親など大人に何かを自分から言ったとしても、結局、「それはダメだから」とか「何とかしなさい」と言われて終わってしまう。そして、「自分がどうしたいから、これをやったのか」とか「なんでこれをしたのか」といった理由には触れずじまいになる。結果として、自己主張することがすごく苦手になってしまいます。

ですので、そのまま大人になって、急に自己の意見を出せと言われても、それは無理な話です。なかなか人には伝えられない、自己主張できなくなっているんです。

そんな中で、SNSという空間では、相手が不特定なので自分自身を吐き出すことができる。SNSは匿名性があるので、そういう人がますます集まってくるわけです。そうすると、心理学的に「リスキーシフト」という言葉があるのですが、匿名性がある中で、どんどん考えが偏っていく。そして、「私みたいな人がこんなにたくさんいる」と同調し、気持ちがさらに膨らんでいく。こうしたことが若者のメンタルにも影響していると思います。

自分の長所も見つけられなくなっていく

──「ネットいじめ」の問題もそうした背景があるように感じます。私がかつて留学していたアメリカでは、みんなの前で自己主張ができる若者を育てるために、スピーチやディベートの教育を実践していたことを思い出しました。日本も早い段階からその実践教育をやるといいでしょうか。

大事だと思います。日頃スポーツメンタルの分野にも関わっているのですが、子どもたちには最初に「自分の長所と短所を言って」と聞くようにしています。

すると日本人は長所が言えないんです。自慢していると周囲に思われるから、遠慮して言えないんです。自分のアピールをすることがすごく苦手。日本は謙遜の文化で、自分の長所を言ったら「出る杭は打たれる」というような雰囲気があり、これは子どもの世界にもあります。

無理してアピールする必要はないかもしれませんが、自分の長所という事実があるのであれば、それはありのままの自分ですから、隠す必要もないと思います。

そうしていく弊害は、自分のよい部分も見つけようともしなくなることです。悪いことばかり気にかける。そういう日本の文化には問題があるように思います。若者が「私っていう存在がいてもいいんだ。私ってこんなすごいことがあるんだ」というふうに思えなくなりかねない、1つの原因かなと思います。

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