その男、凶暴につき ヤバイ日本建設大綱<中> 猪子寿之・チームラボ社長に聞く

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猪子は2代続く歯科医の一人っ子だった。

「物覚えの悪い子でした。記憶力が本当に欠落していたので」。人の名前も覚えられない。字も書けない。情報が蓄積しないから、つねに考える癖がついた。記憶力を試す問題はからきしダメだが、難問になればなるほど「急激に強く」なる。

「夢のない子だった」とも言う。

「死にたいとは思わないんだけど、生きたいとかもなくて。大人になるのは面倒くさいな、と」。「死んだら困ることリスト」を書いていた。死んで、ドラゴンボールの続きが見られなくなるのは困るな--。

そんな猪子に、突然、電波が届いた。

「日本経済を再生しないといけない。どうして思ったんでしょう。自分の住む社会が貧乏になったら、本当にヤだ。キレイごとじゃなく、豊かさを取り戻すために、何をなすべきか」。

中学生時代は、バブルがはじけ、日本の転落が始まっていた。「死んだら困ることリスト」は、生と使命感への渇望だったのか。

電波“降臨”後、大まじめに考えたのは「逆玉」である。ゼネコンの鹿島は3代にわたって東大卒・官僚出身の娘婿が社長になっている。入り婿になって大企業の社長になり、そこから日本経済を変えていこう。まずは東大に入ることだ。

ところが、高校3年でインターネットに出会ってしまった。産業構造も経済社会も一変すると直感した。情報化社会“以前”の会社に入っても仕方がない。

即、逆玉作戦は放擲(ほうてき)したが、東大はそのまま受験した。センター入試はぎりぎり。難問ぞろいの2次試験は楽勝(?)である。

東大在学中は、日本を蘇らせるために何ができるか、考え続けた。

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