笑いが人間だけの特権に見えてそうでもない訳

ヒトは独自に進化したが類人猿にもそれはある

笑いもジョークもユーモアもカジュアルなものであり、そこに価値がある(写真:Koldunova/PIXTA)

先日、知人から個人的な相談を受けた。プライベートで問題に直面しているようで、だが話を聞く限り、それは私のような他人がどうこう口出しできるものでもなさそうであった。

とはいえ助言を求められるし、こちらとしても助けにはなりたいので、思いを次々とぶつけてみた。ところが決定的な答えには行き着かず、そもそも“答え”などがあるはずもないのだから、ほとほと困り果てた。

だがそんな折り、ふと口にしたことばがひとつの突破口になったのだった。

「もう、笑い飛ばせばいいんじゃないの?」

『なぜあの人のジョークは面白いのか?:進化論で読み解くユーモアの科学』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら。電子版はこちら

どのみち正解などないのだし、暗く重たく考えたら、さらに気持ちは沈んでいくだけ。だったら「なんなんだよ、この状況?」と笑ってしまえば、度胸もつくし進むべき道も見えてくるかもしれないということだ。

意外やそれが響いたようで、「確かに笑い飛ばすくらいの気持ちでいれば、いずれ答えも出るだろう」と、話には一応のメドがついた。その結果、なぜかおかしくなってきて、顔を見合わせて笑ったりもした。

たまたま目にした『なぜあの人のジョークは面白いのか?:進化論で読み解くユーモアの科学』(ジョナサン・シルバータウン著、水谷 淳 訳、東洋経済新報社)に関心を持ったのも、そんな出来事があったからだった。

“たまたま”笑いでひとつの話がまとまったから、「やはり笑うことには意義があるなあ」と感じただけのことである。

人間の脳には間違いを見つける専門領域がある

だが、それがきっかけで「笑い」の深みを改めて実感し、それがジョークやユーモアへの興味に結びついていったのも事実。たとえば妙に納得させられたのが、“おかしさ”と“間違い”をひもづけている冒頭部分だった。

間違いは喜劇のネタに使われるだけでなく、私たちが感じるおかしさのおおもとにもなっている。人間の脳の中には、間違いを見つける専門の領域がある。間違いを分析して予想と比べ、面白いと判断された間違いが頭の中を駆けめぐって笑いを引き起こすのだ。この発見によって科学と芸術が思いがけない出合いを果たし、パブで出会った見知らぬ人どうしのように、ジョークをめぐってがっちりと手を組んだ。本書は、その思いがけずも実り多い出合いを描いた本だ。そこから出てくるさまざまな疑問を取り上げて、飛び交うさまざまなジョークを味わい、笑い話の意味を掘り下げていく。
(8ページより)

こう論じられると、ますますジョークやユーモアのことを知りたくなってはこないだろうか?

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