笑いが人間だけの特権に見えてそうでもない訳 ヒトは独自に進化したが類人猿にもそれはある

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動物が遊んでいるときに声を出すのは、おそらく遊びがひとつの社会的交流であるからなのではないかとシルバータウン氏は推測する。「くすぐったり追いかけたりするけれど危害を加えるつもりはないよ」というシグナルを、声を出すことで相手に伝えているというわけだ。

笑いが伝染しやすいのも、こうした役割が笑いにあるからだという。シグナルを受け取った相手が、聞こえた笑い声をすぐにまねれば、遊びの輪に加わることができるということだ。

動物の発するシグナルの進化上の期限をたどっていくと、現在と似ているけれど違う機能を持った行動にたどり着くことが多い。遊戯発声のもともとの役割は、捕食者などの脅威が過ぎ去ったことを家族に伝える、「異常なし」というシグナルだったのかもしれない。
(94ページより)

滑稽な話でくすぐる

チンパンジーとヒトの共通祖先が生きていたのは、およそ650万年前のこと。彼らも遊戯発声を使っていたのだろうが、それはヒトよりもチンパンジーに近かったであろうと推測される。

ヒトの笑いは、それよりずっとあとに進化した発話能力によって形が変わっているからだ。しかもヒトは発話能力を進化させた結果、遊戯発声を促す引き金をさらに増やすことになる。

いうまでもなく、ことばによるユーモアだ。

「『滑稽な話によって想像力がくすぐられる』という言い回しがある。そのいわゆる心のくすぐりは、身体をくすぐるのとおもしろいほど似ている」とはチャールズ・ダーウィン。

不調和が解消されると、私たちはまるでくすぐられたかのように反応してしまうということだ。だとすれば、どのような進化によってそうなったのだろうか? どんな進化も少しずつ進むものであり、すでに持っている特徴なり行動なりが出発点になるという。

アイルランドのゴールウェーにやって来た外国人旅行者が、地元の人にダブリンへの道を尋ねた。するとそのアイルランド人はこう答えた。
「俺ならここから出発はしないな」
〔訳注 180キロ以上離れている〕
(94ページより)

進化は決まって「ここ」から出発するものであり、誰かに進むべき方向を尋ねることもない。したがって笑いの特徴の多く(気持ちよさや社会的役割や伝染しやすさなど)は、その起源であるくすぐりや遊びにも当てはまるはずだとシルバータウン氏は言うのだ。

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