笑いが人間だけの特権に見えてそうでもない訳 ヒトは独自に進化したが類人猿にもそれはある

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ユーモアをいうかどうかは別としても、野生の類人猿も確かに遊びをするだろう。また人間に近い類人猿が、少なくとも不調和を認識して笑うことができるというのは、進化的観点から見て重要な事実だと著者は指摘する。

ヒトに最も近い原生霊長類にユーモアの才能があるとすれば、そうした特徴の起源ははるか昔にさかのぼるものであると考えられるはずだ。互いに近縁の複数の種が同じ特徴を持っていたとすれば、それは共通祖先から受け継いだものだと無理なく解釈できるのだから。

そう考えると、霊長類のユーモラスな行動を確認する際にもさまざまなことをイメージできそうだ。

訳注なしではわからない?

教皇は何で支払いをする?
PayPalで。
〔訳注 同じ発音のpapal(教皇の)と掛けている〕
(10ページより)

たとえば上記がそうであるように、本書に引用されているジョークには訳注を確認しない限り理解しづらいものも多い。そのため戸惑うこともあるかもしれないが、それはユーモアやジョークの本質を理解するにあたってはさほどの問題ではないという気もする。

なぜなら、次々と登場するトピックスは、理屈以前に楽しみがいがあるからだ。その一例が、ここで取り上げた類人猿とユーモアの関係。

つまり、楽しんでしまえばいいのだ。笑いもジョークもユーモアも、本来はそのくらいカジュアルなものであり、そこに価値があるのだから。

少なくとも私はそう考え、本書を純粋に楽しんだ。その結果、自分のユーモアのセンスが研ぎ澄まされたかどうかはわからないけれども、それはまた別の問題だ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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