笑いが人間だけの特権に見えてそうでもない訳 ヒトは独自に進化したが類人猿にもそれはある

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ゴリラやチンパンジーにヒトのような声を出すことはできないが、飼育されていた類人猿のなかには、改良版のアメリカ手話(ASL)を教わって世話係と会話できるようになったものもいるそうだ。

最も有名なのが、雌ゴリラのココ。1歳のときから訓練を受けはじめ、5歳半のときに子ども向けの知能テストを受けたところ、人間の5歳前の子どもに匹敵するスコアを上げたのだという。

2018年に死んだココは、46年の生涯のうちに1000通りの手振りを身につけ、2000以上の英単語を聞いて理解できるようになった。そればかりか人間の5歳児と同じようなユーモアのセンスがあったというのだから驚く。

くすぐられるのが好きだそうで、確かにYouTubeでは、喜劇俳優の故ロビン・ウィリアムズがココと遊びながら笑い転げる様子を収録した動画を確認できる。

ココはゴムホースを手に取ってゾウのまねをし、そのゾウの鼻で大好物のジュースを飲もうとするなど、ごっこ遊びもよくしたそうだ。また、食べられないものをわざと人に食べさせようとして、相手をからかったりもしたというし、人間の幼児と同じように、いろいろなものをわざと違う名前で呼ぶこともあったとか。

だとすれば、ジョークを理解していたということになる。

野生の類人猿の場合

とはいっても、ココは飼育されていたゴリラだ。そこに特異性はないのだろうか? つまり気になるのは、類人猿は野生でもひょうきんな行動をするのだろうかということだ。

もちろん、ゴリラがみんなで輪になって、人間の子どものようにキャーキャーいいながらジョークや下ネタを言い合うとようなことは考えにくいだろう。

だが、ココが同じく手話を教わった雄ゴリラと人間を介することなく会話している様子が観察されているというので、そう考えれば推測できることは決して少なくないことになる。

絶滅の危機をかいくぐった野生のゴリラたちが「間一髪だったよなあ」と言い合ったりすることも、ありえなくはないわけだ。

最近の観察によって、野生のチンパンジーは独自の手話言語を持っていて、「やめろ」、「あっちへ行け」、「それをくれ」、「ついてこい」、「毛づくろいをしよう」、「セックスしよう」といった意味と思われる手振りを使っていることが明らかになっている。しかし残念ながら、野生のチンパンジーも人間の近くで暮らしていると社会生活が脅かされて、行動の種類が少なくなってしまう。ということは、チンパンジーのユーモアの才能は観察されているよりももっと高いのかもしれない。
(112〜113ページより)
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