笑いが人間だけの特権に見えてそうでもない訳 ヒトは独自に進化したが類人猿にもそれはある
なお、著者のシルバータウン氏は進化生物学者である。したがって、「これまではもっぱら植物のなぜを調べてきたので、この分野ではいわばもぐりだ」という記述自体がすでに笑える。しかし、こうしたスタンスを表明するところからもシルバータウン氏のユーモアを感じ取ることができるのではないか。
だから、ついついページをめくり続けてしまったのだ。
動物は笑うのか
自然科学者のチャールズ・ダーウィンは、“笑い”を究明するために幼いわが子を実験台にしたのだそうだ。などというと恐ろしく聞こえてしまいそうだが、なんのことはない。子どもをくすぐることで、笑う力がかなり幼いころから発揮されることを明らかにしたにすぎない。
その観察結果が収められた『人及び動物の表情について』のなかでダーウィンは、「笑いを含め、ヒトが感情を表現する方法には動物に似ているものが多い」ことを示した。
動物が笑うとは、それ自体が笑いたくなるような話だ。作家のマーク・トゥエインも、彼が生きた19世紀に広く信じられていた考え方を次の1行ジョークに落とし込んでいる。
しかしダーウィンは、動物園の動物や家畜を観察した結果、そうではないと考えるようになった。
事実、現代において動物が笑うことは冗談でもなんでもないようだ。映像に収められた野生の大型類人猿の様子を見ると、オランウータンもチンパンジーも、ボノボもゴリラも、みんなくすぐられると笑う(心理学者によれば「遊戯発声〈play vocalization〉」をする)ことがわかるという。
たとえばチンパンジーは生後わずか4週半でくすぐり遊びに加わり、くすぐってほしいことを伝える特徴的な身振りをするようになるそうだ。
チンパンジーは格闘ごっこをするときに「プレイフェイス」と呼ばれる特徴的な表情をするが、笑い声はヒトとはまったく異なる。ヒトが息を吐きながら「ハッハッハッ」と笑うのに対し、チンパンジーは息を吸いながら「アッアッアッ」と笑うというのだ。
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