伝説の思想家が説いた「思想を残す」という重み

内村鑑三は100年前の若者に一体何を伝えたか

無名の学者が書いた、たった1冊の本が革命につながった理由とは(写真:traveler1116/iStock)
1894年、今から100年以上前、明治時代のとある夏の日、日本を代表する思想家・内村鑑三が当時の若者を集めて講演を行った。後に『後世への最大遺物』というタイトルで本としてまとめられたこの講演は、今も読みつがれ、星野佳路氏(星野リゾート代表)やアフガニスタンで人道支援を続けていた故・中村哲医師ら多くの人に影響を与えている。
内村がこの講演で語ったのは、「死ぬときに何をのこすべきか」ということ。意外にも内村は、第1にのこすべきものはお金であり、第2には事業であると語ります。キリスト教徒でもある内村が第1に語ったのはなぜお金なのか? そして誰もがのこせる自分だけの価値のあるものとは何か? 
「お金を忌避する人に知ってほしい『伝説の講演』」(2021年3月10日配信)、「金儲けがうまい人に知ってほしい『伝説の講演』」(3月17日配信)に続いて、100年以上前の名著を現代語に読みやすくし、佐藤優氏が解説を加えた新刊『人生、何を成したかよりどう生きるか』より一部を抜粋しお届けします。

事業を行ったかどうかで人の評価はできない

昨夜は後世に遺すべきものについて、第1にお金の話をし、次に事業の話をしました。

では、財産を築く才能も、それを有効に使う才能も、事業を興す才能も、事業をするための社会的地位もない場合、私たちは何をすればいいのでしょうか。事業をするには、神から与えられた特別な才能が必要なだけではなく、社会的な地位が必要です。

私たちは時々、あの人は才能があるのに、なぜそれを活かさないのかと言ったりしますが、それはひどい話です。

人は地位があれば、つまらない人でも大事業をする可能性がありますが、地位がないせいで、偉大な人で大きな志を持っていても、業績を残さず、ひっそり一生を終えてしまった人もたくさんいるのです。ですから、事業をしたかどうかだけで人を評価することはできないと思います。

では、事業の才能もなく、地位もなく、友達もなく、社会からの賛同も得られなかったら、私は何も遺せないのでしょうか。いえ、それでも、私にはひとつだけ遺せるものがあります。

それは思想です。考えたことを成し遂げられなければ、考えを書き遺すことができます。あるいは、私が生きている間に、自分の思想を一生懸命若い人に教えて、その人が事業を興せばいいのです。本を書くか、教育するかという2つならできるのです。

次ページ第3にのこすべきものは「思想」である
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