Jリーグに「補強苦手なクラブ多い」残念な理由 世界で戦うために必要な「運任せ」からの脱却

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求められるのは、合理性を突き詰めていくこと。適正な、可能であれば、より安価な金額で選手を獲得し、チームとして最大の効果を出すことだ。ROI(投資利益率)を最大化するために、彼らは長い期間をかけ、さまざまな経験から自分たちが独自に安くて良い選手を探すための道を模索している最中だ。

日本の多くのクラブの資金力、そしてコロナ禍の現状では、欧州クラブのように長い時間をかけ、失敗と成功を繰り返す時間的余裕はない。自分たち自身で道を開拓していくしかない。

Jリーグのクラブは選手をどのようなプロセスで獲得するのだろうか。

1.自分のクラブのユースチームから昇格させる。
2.高校のサッカー部から能力が高く将来性のある選手を獲得する。
3.大学のサッカー部から能力が高く将来性のある選手を獲得する。
4.自分のクラブのアカデミー出身者だが、上のカテゴリーに上げられなかった選手を一度
他のチーム(高校、大学など)に預け、成長を確認して獲得する。
5.JFL及び、その他の地域リーグからプロで通用する能力のある選手を獲得する。
6.他のJリーグのクラブから獲得する(契約満了前の選手のリストアップなどを含む)。
7.契約満了になった選手対象に行われるJリーグ主催のトライアウトで獲得する。
8.仲介人からの売り込みによる情報を元に海外、国内の選手を獲得する。
9.その他(自クラブ開催のトライアウトなど)

おおむねこれらの選択肢の中から、選手を見つけ、獲得することになる。

指導者と強化担当者のネットワークへの過度な依存

選手の情報に関して、Jリーグのクラブに所属している選手であれば、試合に出ていれば実際に試合を見ることも可能だし、映像もデータも手に入りやすい。あまり試合に絡んでいなくても、強化担当者および指導者に話を聞けば、ある程度の情報は得ることが可能だ。

ただ、高校、大学では元々Jリーグの下部組織出身者や強豪高校や高校時代選手権出場など実績を残した選手以外の情報はそれほど多くない。そこでは指導者とクラブの強化担当者とのネットワークだけが頼りになる。無名、有名に関わらず、いかに効率的に良い選手を拾い上げる網を独自に作り上げることができるかが重要だ。

現状は細いネットワークの糸を手繰り寄せ、強化担当者が気になる選手の試合および練習を見に行き、指導者から直接本人の性格、進路希望、技術、フィジカル的な能力、怪我歴などさまざまな情報を仕入れるという地道な作業が行われている。

外国人選手を獲得する場合は、よほど有名な選手をピンポイントで取りに行く以外は、仲介人が用意する選手の“編集”映像とプロフィール、データなどの情報で判断することになる。しかし“編集”の技術次第でごく標準的な選手がその国の代表選手に見えてしまうことが多々ある。

実物とのギャップを避けるため、最近はWyscout、InStat、Scout7など、選手のデータ、編集していない出場試合の映像を丸ごと見ることができるサービスを利用するクラブが増えてきている。

いずれの方法であれ、どの選手を獲得するかは、クラブ側のニーズによる。どのポジションの選手が不足しているか? どのポジションの年齢が上がってきているか?を中長期的な目線でチーム編成を考えるケース、当期の優勝、昇格を狙うため、あるいは降格を避けるための短期的なピンポイント補強という2つのケースがある。

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