Jリーグに「補強苦手なクラブ多い」残念な理由 世界で戦うために必要な「運任せ」からの脱却

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選手の成功は、実力だけではない。突然の怪我や病気はもちろん、監督やチームとの相性など運の要素が存在する。しかし、それらすべてが運だと片づけてはいけない。ピッチ同様、運に頼る部分を減らし、コントロール可能な部分を増やす努力はここでも重要だ。

選手とチームとの関係は常に相思相愛とは限らない。どちらかの問題で、結果的に不幸な出会いだったと言わざるを得ない場合も多々ある。では、どういうときに不幸な出会いが起きてしまうのだろうか。

映画「マネーボール」で知られる、MLBのオークランド・アスレチックスでGMを務めたビリー・ビーンは言う。

「選手を変えることはできない。あるがままの姿しか望めない」

データは「あるがままの姿」を把握する大事な情報

誤解を招きがちな言葉だが、真実だ。若い選手に対して、指導と、本人の意識で生活態度を変え、怪我を減らす努力を行い、家族やチーム関係者に対するリスペクトの気持ちを持たせることは可能だ。そういう意味では、少しだけ選手を変えることができる。

しかし、元々キックが苦手な選手にワンステップで40mのロングパスをピンポイントで通させることも、メッシのようにドリブルで何人もかわしながらゴールを決める技術を身に付けさせることもほぼ不可能だ。ゲームを鳥のように俯瞰して見る能力や、最適な判断を下す認知能力も天性のものだ。

本当は選手たちが身に付けている“あるがまま”の姿を把握し、それを少しだけ改善し、チームにとって必要なパーツとして適正なポジションに配置するということしかできないのかもしれない。

データは、選手の“あるがままの姿”を正しく把握するための大事な情報だ。結果的に不幸な出会いとなってしまう原因のひとつは、選手の“あるがままの姿”を映し出すスカウトの目は主観的だということだ。

スカウトの目で評価したその選手の特徴がチームの中で力を発揮できるかどうかは、その選手のあるがままの姿とチームスタイル、監督との相性が大きく影響する。目で見た主観的な評価というとサイエンスとかけ離れ、少しネガティブな表現に聞こえるかもしれないが、言い換えれば、長年の経験に裏付けされたそれなりに再現性ある手法だ。

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