震災10年「使命果たせなかった放送局」後悔と今 データから浮かび上がる災害報道に必要なこと

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東日本大震災以降の災害報道を概観してきて感じることがある。近年、「地震の活動期」や地球温暖化による「気候変動」など、自然災害が頻発する時代へと再び突入したとして、政府も危機意識を募らせている。こうした現代において放送メディアは何をすべきなのだろうか。それはひとえに「防災意識社会の構築」に寄与することではないだろうか。

新型コロナ対策もそうであるが、災害が起きたときに、住民が命を守る行動を取るための「情報」を、少しでも早く、いかにわかりやすく伝えるかは、防災機関としての放送局の重要な役割である。だがそれだけではなく、もっと事前の防災活動の啓発にも力を注ぐべきである。

民放、NHKの枠を超えた取り組みがあってもいい

近年の科学技術の発展は、さまざまな自然災害の発生予測と起こりうる災害の規模を予想できるようになっている。例えば、首都直下地震も南海トラフ地震も、その規模と起こりうる災害の規模については最新の知見が報告されている。あとは「いつ」かが問題なだけである。風水害にしてもハザードマップに起こりうる被害想定は落とし込まれている。

こうした知見を、災害が起こる前にいかに視聴者、住民に届けることができるかが、住民が被災したときにその被害を軽減し、命を守る行動を取ることにつながるのだと思う。

それぞれの地域で共同して、防災・減災の番組を制作し、民放、NHKの枠を超えて日本全国で一斉にキャンペーン報道を行うといった取り組みがあってもいいのではないかと思う。

あるいは、中京地区におけるヘリの共同取材のように、巨大災害の発生を予測し協業して取材態勢を組む、といった取り組みを全国で進めていくことを、もっと真剣に考えることも必要なのではないだろうか。

放送メディアには、「発生するおそれがある場合には、その発生を予防」(放送法108条)する放送を行わなくてはならないことを、今一度肝に銘じてほしいと願うばかりである。

〈引用文献〉
*1藤田真文(2013)「ローカルテレビと東日本大震災―全一五局の聞き取り調査から」丹羽美之・藤田真文編『メディアが震えた:テレビ・ラジオと東日本大震災』東京大学出版会。
*2瀬川至朗(2011)「原発報道は『大本営発表』だったか―朝・毎・読・日経の記事から探る」『Journalism』255、朝日新聞社ジャーナリスト学校、28―39頁。
*3伊藤守(2012)『テレビは原発事故をどう伝えたのか』平凡社。
*4佐藤崇(2013)「原発事故を私たちはどう伝えたか―家族が地域が引き裂かれていく中でメディアはその役割を果たせたか」丹羽美之・藤田真文編『メディアが震えた:テレビ・ラジオと東日本大震災』東京大学出版会。

〈謝辞〉
災害報道10年のメタデータ分析は「2020年度高橋信三記念放送文化振興基金」の助成により行った。

桶田 敦 大妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科教授

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おけた あつし / Atsushi Oketa

元TBS報道局解説委員。災害報道を専門とし、東日本大震災後にテレビユー福島で原発事故報道に携わったのち、現在は大妻女子大学でテレビを中心にしたメディア論などを教えている。「原発避難家族の挑戦」で2019年度日本民間放送連盟報道部門優秀賞受賞。著書に『4つの「原発事故調」を比較・検証する』(共著)、『災禍をめぐる「記録」と「語り」』(共著)などがある。ギャラクシー賞テレビ部門委員。

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