震災10年「使命果たせなかった放送局」後悔と今 データから浮かび上がる災害報道に必要なこと

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東日本大震災から10年。テレビは災害をどれくらい報じてきたのだろう。図は、2011年3月から2020年12月までの災害報道の変化を時系列で表したものである。

(画像提供:GALAC編集部)

ここで用いたデータは、JCC株式会社から提供を受けた在京6局(NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ)すべての放送番組のメタデータを基にしている。

まず、年代ごとに、災害に関係する10のキーワード(災害、震災、原発事故、除染、台風、地震、噴火、土砂災害、水害、コロナ)で番組コーナー単位のメタデータを抽出した。そのうえで「KHCoder」を用いて、災害に関係する語句(震災、原発、台風、地震、噴火、豪雨or大雨、大雪)の抽出を行い、各語句の頻出数の経年変化をグラフ化したものである。

ただし本稿では、便宜的に抽出語1語を1件の報道量として扱った(抽出された番組コーナーのダブりなどのスクリーニングを行っていないデータを用いた解析なので、実際の件数はこのデータより下がるはずである。本稿では大まかな傾向として見ていただきたい)。

原発事故の影響は今も報じられている

2011年3月11日に発生した、東日本大震災と福島第一原発事故に関する報道は、同年3月からの10カ月で、それぞれほぼ4万件に上っている。これら「大震災」と「原発」で検索されたキーワードから類推する報道量は、翌2012年には半数以下の約1万6000件、2013年には9000件程度にまで減少し、以降、台風関連の報道件数の方が上回ることになる。

だが、震災と原発事故関連の報道は無くなることはなく、2020年でも震災関連約5000件、原発事故関連2400件あまりが抽出された。震災から10年近くを経たとはいえ、放送メディアは、人々の記憶から風化させない報道と、今なお続く原発事故の影響について報じていることがわかる。

ここで、いったん東日本大震災と原発事故の初期報道を振り返っておこう。2011年3月11日午後2時46分。東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災が発生したとき、私はTBS放送センターの7階にいた。特定利用者向け緊急地震速報のメールで、「宮城県沖でマグニチュード8の地震」という情報が飛びこんできた。慌てて2階の報道センターに駆け下りた。

次ページ報道センターに着くと緊急放送が始まっていた
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