震災10年「使命果たせなかった放送局」後悔と今 データから浮かび上がる災害報道に必要なこと
次に「火山」を見ていくと、2014年、2015年、2018年にピークができているのがわかる。2014年は、9月7日に水蒸気爆発を起こし58人の死者を出した、長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山の噴火である。
当日は秋晴れで絶好の登山日和だったため、朝から大勢の登山者が山頂に押しかけていた。そうしたなかでの突然の噴火だった。登山者がスマホで撮影した噴火の様子や、迫りくる火山灰を撮影していたこともあり、火山災害の恐ろしさがテレビなどを通じて衝撃的に伝わった。
その御嶽山の報道量を上回ったのが、翌2015年4月から9月にかけての神奈川県箱根大涌谷の小規模噴火だった。5月6日には噴火警戒レベルが2になり、大涌谷への立ち入りが規制された。
6月30日にはレベルが3に引き上げられ、入山規制がかけられるなどしたが大きな噴火には至らなかった。だが、関東に近い一大観光地ということもあって、ニュースや情報番組で連日報じられるなど社会現象化したこともあり、1万1000件を超える報道量となった。
近年、気候変動に伴った気象災害の多さが報道量の変化にも如実に表れている。「台風」の報道量は、2013年を境に1万件を超え、2019年には3万2000件に達した。この年は、前年に引き続き5個の台風が上陸した。
特に甚大な被害をもたらしたのが、9月9日に房総半島を直撃した台風15号と、2010月12日に伊豆半島に上陸し、その後関東地方と福島県を縦断した台風19号である。特に被害が大きかった台風19号は、多摩川や千曲川、阿武隈川で氾濫、堤防決壊を引き起こした。大雨特別警報は13都県が対象となるなど、各地域の放送局は台風の接近前から連日報じていた。
気象庁は、台風15号を「令和元年房総半島台風」、台風19号を「令和元年東日本台風」と命名した。気象庁が台風の命名を行ったのは42年ぶりであることからも、この年の報道量が飛び抜けて多いことが裏づけられる。
2020年は新型コロナが約20万件
最後に2020年を振り返る。2020年は新型コロナウイルスによる感染拡大のニュースに明け暮れた。前出の図には記載していないが、「コロナ」という語句の検索結果は、実に19万2000件に上り、東日本大震災の5倍近くに及んだ。連日ニュース番組や情報番組で新型コロナに関連するニュースを取り上げない日はない圧倒的な報道量である。
緊急事態宣言、感染者や亡くなった人の拡大、経済への影響、あらゆる指標をとっても、東日本大震災を上回る社会的に大きな関心事であることに違いない。
だが、新型コロナウイルスの感染拡大を災害関連の報道と捉えたとき、連日報じられる内容は、原発事故報道で指摘された「大本営発表」や「危機をあおるだけの報道」と似た感覚を持ってしまう。科学的データに裏づけされた客観報道と、番組や局の議題設定に基づく検証報道の重要性を、東日本大震災や原発事故の教訓からもっと学ぶべきであろう。各局とも多様な情報の選択、提供があってもよいのではないかとも思う。
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