長期金利上昇「容認せざるをえない」複雑な事情 金利の正常化を意味するがさまざまな摩擦も

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日本銀行のガイドラインでは、長期金利は、ゼロ%を中心として上下0.1%の幅に収めるとしている。ただし、上下0.2%までの変動は認めるとなっている。

長期金利は変動許容幅の上限に近づきつつあるため、変動許容幅を拡大するのか(つまり、長期金利上昇を容認するのか)、あるいは、変動幅は拡大せず、金利を抑え込むのかが問題となる。

これは、3月18、19日に予定されている日銀政策決定会合での主要な検討課題となるだろう。

金利の上昇を認めず、抑え込むためには、中央銀行が市中からの国債購入を増やすことが必要だ。そうすれば、国債の流通価格が上昇し、流通利回りが低下する。

昨年の3月にアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が行ったのは、これだ。アメリカの場合には、いまでも、国債購入増加で金利を下げる余地がある。FRBがそれを決めれば、株式市場の状況が変わる。

日本では、国債購入増加の余地がない

日本でも、同じ政策を取ればいいように思われるかもしれない。

しかし、日本では、同様のことを行う余地がない。なぜなら、異次元金融緩和によって国債を購入し続けた結果、国債発行額のほぼ半分を日銀が保有するという、異常な状態になっているからだ。

この経緯を振り返ってみよう。

異次元金融緩和政策は、量的緩和政策として出発した。つまり、国債購入額の増加が、その手段だった。具体的には、長期国債の購入額を年間50兆円程度にすることとされ、2014年には、これが80兆円に増額された。実際の購入額も増加し、2015年には80兆円を超えた。

この結果、日銀の国債保有額は、2012年12月末には預金取扱機関の約3割でしかなかったが、2015年9月末には預金取扱機関のそれを超えた。

そして、日銀購入額も2016年1月末にピークとなった。その後、日銀はマイナス金利政策に転換し、国債購入額は減っていった。

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