長期金利上昇「容認せざるをえない」複雑な事情 金利の正常化を意味するがさまざまな摩擦も

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アメリカの長期金利は、2020年の1月には0.9%程度であったが、2月に急激に低下して0.5%となり、その後、0.6%程度で推移した。

日本の株価上昇は、アメリカの場合のように金利低下でもたらされたものではなく、むしろEFT(上場投資信託)の購入増大(およびバブル)によって引き起こされた側面が強い。

以上を考えると、上下に0.2%という変動幅を拡大せざるをえない可能性もある。

金利の正常化は、大きな摩擦を引き起こす

金利上昇の容認は、金利正常化を意味する。

日本の自然利子率(資金の需給を均等化する実質長期金利)がどの程度の水準なのかは直ちには明らかでないが、現在の誘導目標である0%より高いとは言えるだろう。しかし、それに向かっての現実の金利引き上げが、いくつかの問題を引き起こすことは、避けられない。

まず、株価への下落圧力が強まる。

それだけではない。長期金利が上昇すれば、国債発行が難しくなる。どちらも異常な状態から正常な状態への回帰なのだが、摩擦は大きいだろう。

また、金利上昇は、日銀が保有する国債の価値の下落を意味する。これは、含み損だが、満期まで保有しても利益が出るとは限らない。なぜなら、日銀オペで日銀が償還価格より高い価格で買った場合があるからだ。

日銀の「営業毎旬報告」によると、今年2月10日時点での日銀保有長期国債の簿価は、500.8兆円だ。他方で、「日本銀行が保有する国債の銘柄別残高」によると、額面ベースでの長期保有国債額は487.5兆円だ。日銀が償還まで保有すれば、この差額(13.3兆円)だけの損失が発生することになる。

日銀保有国債の含み損は、2013年末時点では2.7兆円にすぎず、2015年末時点でも5.9兆円だった。しかし、マイナス金利政策によって、含み損の拡大ペースが加速したのだ。

いま、こうした異常な状態からの脱却が必要とされている。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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