日本人に知ってほしいサステナビリティの本質 小林いずみさんが指摘する日本の議論のズレ

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小林:世界中でさまざまな問題が山積する中では、それぞれの問題について優先順位をつけながら、解決に取り組んでいかなくてはなりません。先ほど述べたように、グローバルのトレンドの中で、その優先順位が入れ替わる潮目があり、ある課題がグローバルのアジェンダのトップに躍り出ることがあります。グローバルでの競争を制していくためには、その潮目を逃してはいけないんです。にもかかわらず、そのような潮目を見て、多くの問題の中から先手を打つことを日本企業はまったくできていません。グローバルの世論を嗅ぎ分けながら、自分たちの企業戦略に活かそうとする志があまりにも弱いんです。

須賀:今回のインタビューシリーズを通して、グローバルの視点から、日本企業の経営者の勉強不足を指摘される方が多くいらっしゃいました。コロナ禍に、世界経済フォーラムでは、数百にものぼるウェビナーを開催し、各業界のCEOなどのトップ層が、コロナ禍の社会をどう見ていて、あらゆる変化に対して、今後どのように備えていくべきかということを情報交換し合う場を設定したんです。ただ、驚くべきことに、日本の経営者はその場に誰もいない。世界中の経営者が未知な状況に対して必死に勉強している間に、日本の経営者は、現場の担当者に「調べておけ」と丸投げしているのだと感じました。

国際会議への出席がステータス稼ぎではいけない

小林:言語の問題で躓いてしまう方も多くいらっしゃるとは思うのですが、日本の経営者の意識の低さは大きな問題です。ただ、私が見てきた中でも、これまでサステナビリティの課題について、形だけやっていた会社でも、CEOが国際会議に出席し、気候変動に関する議論を聞いてきたことで、問題の取り組みに対する温度感が極端に変わったこともありました。まずはそういったグローバルの会議に出て、議論をキャッチアップすることが必要になります。国際会議に出ることがステータス稼ぎのようになってしまってはダメです。

須賀:今後、日本が遅れを取り戻すためには、何が重要になりますか? このままでは、先見の明がある国家や投資家が張り終えたフィールドで、日本が高値掴みを続けて、損を重ねていく未来が待っているように感じます。

小林:おっしゃるとおり、今後、日本が高値掴みをしてしまう可能性もあるかもしれませんが、脱炭素社会の実現のために、これから開発されなくてはならない技術は、まだまだ多く残っていますし、サステナビリティがグローバルにおける最も重要な問題であるということは今後も変わらないので、巻き返していくチャンスはまだあると思います。

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