この文章に込められた意味をどう解すればよいだろうか。最も注目されるのは、中ごろにある「数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。この引下げは、来年度から開始する。」だろう。前段はぼかしてあるが、後段は言い切っている。言い切っている方からみると、法人税率引下げは、来年度から行うことが、ここではっきりした。もはや引き下げないわけにはいかない。
数年で何%引き下げるのか?水面下で続く駆け引き
では前段はどうだろうか。「法人実効税率を20%台まで引き下げる」と言いながら、20%台は20%から29.9%まである。少なくとも30%を割るところまで税率を引き下げるとしても、数年で何%下げればよいかは、文面には現れない水面下での駆け引きがすでに始まっている。
現在の法人実効税率は、日本経済の中心である東京都では35.64%だが、国が定めている税率に従えば34.62%である。これは、東京都が他の自治体と比べて独自に高い税率を課している(超過課税)からである。スタートラインの認識からして、1%の差がある。20%台を実現するのに、東京都を基準とすれば少なくとも6%は下げなければならないのに対し、国が定めた税率でいえば5%下げれば実現できる。しかし、東京都が超過課税をやめなければ、5%下げただけでは、東京都では実効税率は30%を下回らないままとまる。
さらに、前には「数年で」と冠しており、後には「目指す」と締めくくっている。「目指す」と言うと、必ず実現するとは限らず、あくまでも実現すべく努力するのであって、諸般の事情を考慮して実現できなかったとしてもやむを得ないという含みも否定できない。
また、「数年」とは2~3年以内なのか、5年前後なのか。そこはあいまいとなっている。年限については、前掲した「骨太の方針」の最後の段落の文言との関連もある。それは、2020年度の財政健全化目標との兼ね合いである。
今年の1月に出された内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」によると、今後名目経済成長率が3%程度で推移しても、2020年度では国・地方を通じた基礎的財政収支対GDP比は1.9%の赤字になるとされる。ただでさえ、2020年度には今回「骨太の方針」として閣議決定された財政健全化目標を達成できるメドが立っていないうえに、成長率がこの想定より下がれば基礎的財政収支の赤字が拡大する恐れがある。
だから、法人減税の財源確保次第ではあるが、もし財政健全化目標が達成できない事態に陥りそうになれば、税率引下げのスケジュールを見直さなければならないということもありうる(筆者はそうなってほしくないと思っているが)。そういうニュアンスが見え隠れする。
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