ソニー、テレビにAndroidを全面採用 今村社長が語るブラビア復活への道筋

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今村氏は今年の事業目標である年間1600万台という販売台数について「無理だとは思わないが、市場環境や顧客ニーズにも依存している」と話した。すなわち低価格へとニーズが偏れば台数は増えるが、高付加価値路線へと振れれば事業利益は大きくなっても台数は減る。

「2020年の東京オリンピックの頃までには”テレビ”という商品カテゴリではなく、ディスプレイは新しい商品カテゴリになっているかもしれない。(テレビはコモディティとして扱う動きもあるが)我々は感動を映し出す窓としてディスプレイの質を高めていく」(今村氏)

今村氏は昨年のテレビ事業を振り返り、新興国での為替変動による収益悪化が大きく響いたことに言及。分社化により経営判断のスピードが上がり、事業リスクを最小限に抑えることで、黒字化は十分達成可能だ……いや「すでに1年目の黒字化は視野に入っている」というが、やはり問題はテレビという商品カテゴリで収益性を確保していくことだろう。

問われるのは、ソニーの縦糸

4Kへの移行期には高付加価値テレビへの注目が集まりやすいが、今後、4Kも”当たり前”の世界になっていくことは明白だ。その中にあって、商品価値を高めることにフォーカスする今村氏が結果を出せるか否かは、ソニー自身が持つ”縦糸”がどこまで豊富に存在するかに依存する。

たとえばグーグルのプラットフォームという横糸を、ソニーグループのコンテンツ力やメディアサービスという縦糸で、どのような価値へと昇華できるかだ。

「目標台数を達成したとしても、商品価値が低ければ売り上げも利益も伸びない。台数は営業で伸ばせても、収益力を伸ばすには商品力を高めるしかない」と話す今村氏は、先日来、民生用テレビとしては採用をあきらめたと報道されているOLEDテレビに関しても言及した。

「現在、液晶を主軸に製品開発をしているのは、液晶テレビの画質がまだ進化し続けているからだ。ダイナミックレンジ、コントラスト、色再現域など様々な要素において進化している。OLEDを使ったディスプレイが、価格も含めて総合的に液晶テレビを上回るようになれば、OLEDテレビの方が良いと判断できるときが来るかもしれない。その可能性については、否定するつもりはない」(今村氏)

世の中では「万年赤字部門のテレビを分社化した後、本当にバランスシートは改善するのか」という部分にフォーカスが当たりがちだ。しかし今村氏の話を聞く限り、バランスシートを重視するのは当たり前。しかし、もっとも大切なのは”台数やシェアに囚われることなく商品価値を高める”取り組みの成否であろう。

果たしてそれをやりきることができるのか。まずはこれからの1年、ソニービジュアルプロダクツの業績に注目したい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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