ソニー、テレビにAndroidを全面採用 今村社長が語るブラビア復活への道筋
この論法の中において、前述のAndroid ”L”は横糸に相当するものだ。ネットワークサービスへの接続を前提として、基本ソフトやユーザーインターフェイスをどのようにくみ上げていくか。そしてその基本となるソフトウェア基盤をどうするか。そういった部分は独自に構築するよりも、汎用的なプラットフォームに初期段階からコミットしていくことで、ユーザーの利便性を追求した方が良いという選択である。
今村氏の話からは、縦糸と横糸の取捨選択を慎重に行ってきたという自信がうかがわれた。その背景には”ソニーには、より良いタペストリーを編み上げるだけの魅力的で優れた縦糸が豊富にそろっている”という自信があるのだろう。
高付加価値品の販売を続けられるか
ソニーは平井氏が社長になって以降、台数やシェアをコミットすることよりも、商品そのものの価値を高めることを重視してきた。今年発表されている4Kテレビの中でもX9500BシリーズとX9200Bシリーズは、とりわけ他社に対して画質面、あるいは音質面で優位性を持っている。
とはいえ、ソニーは過去にも高付加価値テレビを発売し、高い評価を得ながらも平均売価の下落とともに高付加価値製品をラインアップから落とした過去がある。果たしてこれからも高付加価値製品を出し続け、”SONY”、”BRAIA”のアイデンティティを保ち続けることができるのか。
今村氏は「製品メーカーのビジネスは、価格を落として量販に徹するか、高付加価値を実現して十分な利益を確保するか。究極的には二つの方向しかない。本当にやれるのか?という問いに対しては”やる”という答えしかない」と話す。
実のところ、この話はテレビ部門黒字化に向けての施策と連動する話でもある。
今村氏の言うタペストリー理論は、平たく言えばコモディティを横糸に取りながら、縦糸に何を使うかで差異化をいかに行うかという話だ。”誰でも調達できる4Kパネル”で商売をするだけならば、付加価値を取ることはできず、ソニーのテレビを選ぶ意味はない。
現在のBRAVIAが”差異化技術”として持つダイナミックレンジ拡張や直下型LEDを用いたローカルディミング、色域拡張などは、過去の高付加価値製品で採用しながらも一度は捨てた(商品から外した)。しかし、タペストリー理論の中では、これらを使いこなし、また消費者に対して明確な付加価値として認めてもらえるよう研鑽を重ね、コミュニケーションを密にして訴求しなければ、ブランドとしての存在価値を失ってしまう。
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