鉄道きっぷ「転売ヤー」、なぜ規制できないのか 買い占めの"迷惑度"は興行チケットと同じはず

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一方で、コンサートのチケットは、まさにそのアーティストのそのときのコンサートに行くのでなければ意味がない。代替性があるものと、そうでないものとで扱いが異なっているということもいえるだろう。

しかし、チケット不正転売防止法が定められたのは「ほしいのに買い占められて買えない」ということを回避するということが大きな理由である。昨今隆盛を極めている観光列車は、乗ることが目的の列車であり単なる移動手段ではない。大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」などの機会に、特別に運行される希少な列車も同様である。

これらの列車はコンサートと同様に代替性に乏しい。しかも指定席ならコンサート以上に限られた席数しかない。記念きっぷも普通の入場券や乗車券と違ってやはり代替性がない。鉄道のきっぷとコンサートのチケットの扱いを画一的に峻別できるのかどうかは疑問がある。

鉄道の世界でもしっかり網を

取引は供給者と需要者とのバランスで価格や条件が決まるし、目端が利くことは商売の才覚でもある。転売をする人は売れ残りのリスクも抱えるわけでもあるし、自由な経済活動の保障の点からも利益と不利益を考えて行う転売それ自体を一律に禁じる必要はない。

しかし、正規の問屋でも卸業者でもない者が、供給者と需要者で直接行われるはずの取引に強引に首を突っ込んで取引を歪めるのは、正当な取引を阻害するものであって需要者を食い物にするものである。自由な経済活動に対する挑戦でもある。

チケット不正転売防止法が「国民の消費生活の安定に寄与」するというなら、適正な価格で鉄道の旅を楽しむことも「心豊かな国民生活の実現」のためには重要である。

いわゆる「転売ヤー」の横行を放置しておけば「きっぷが買い占められて正規の値段で買えない」「完売のはずなのに実際は空席が目立つ」という事態を招きかねない。コンサートチケットの不正転売を禁止するのであれば、鉄道の世界でもしっかりと網をかけてほしいと願う。

もし、高額転売を狙って買い占める行為が鉄道趣味者によってなされているのだとすれば、鉄道会社側の対策強化によって、いずれは自らの趣味の世界を衰退させることにつながりかねない、という点も指摘しておきたい。

小島 好己 翠光法律事務所弁護士

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こじま よしき / Yoshiki Kojima

1971年生まれ。1994年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。幼少のころから現在まで鉄道と広島カープに熱狂する毎日を送る。現在、弁護士の本業の傍ら、一般社団法人交通環境整備ネットワーク監事のほか、弁護士、検事、裁判官等で構成する法曹レールファンクラブの企画担当車掌を務める。

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