迷惑防止条例では、従来からの典型的なダフ屋を念頭においているためか、物理的な公共の場所や列車内などでのダフ屋行為に処罰対象を限定している。インターネットなどの仮想空間は想定されていない。そのため、ネットオークションで乗車券などを転売すること自体を禁じてはいない。
また、「物価統制令」で暴利をむさぼる不当な転売を処罰するという手法もあるが、これは古い法令で目的が「終戦後の事態に対処して物価の安定を確保することで社会経済秩序を維持、国民生活の安定を図る」ということにある。昨今の不当転売に当てはめるのはそもそも無理があるようにも思う。
鉄道のきっぷは対象外
一方、2019年6月に施行されたチケット不正転売防止法により、「特定興行入場券」と指定される演劇関係のチケットを不正に転売したり、不正転売の目的で譲り受けたりできないようになった。
この法律の目的は「特定興行入場券の不正転売を禁止するとともに、その防止等に関する措置等を定めることにより、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定に寄与するとともに、心豊かな国民生活の実現に資すること」にある(第1条)。
「映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせる」という興行の入場券を対象にしており、鉄道の乗車券は対象にしていない。
鉄道の乗車券や指定席券は、列車での移動のためや移動時の着席確保のためのチケットである。乗ろうと思っていた列車に乗れなくなった場合でも、他の列車、あるいはバスや飛行機など他の交通機関を利用すれば移動や着席の目的は達成できる。
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