悲しい現実「目立つ奴ほど昇進する」の深い意味

「自己アピール上手の実力者」が山ほどいる世界

今になって考えると、ソフト煉獄さんと、昇進した別の先輩の違いがわかります。「自分をアピールする能力」です。

出世する人が「アピール上手」なのは古今東西を問いません。仕事の実力は十分なのに、アピールが下手なためいつまでたっても昇進できない。私はこれまで日本、イギリス、ドイツ、ニュージーランドの企業で働いてきましたが、そういった人はどこの国にもいました。

日本ではこの手のアピールがネガティブに捉えられがちなので、「アピール下手」の出現率もひときわ高いというのが実感です。

商売の世界では、このネガティブな意味での「アピール」に近いニュアンスで、「マーケティング」という言葉がしばしば使われます

例えば、ほとんど実態のない情報商材や紛いものの化粧品、サプリなどを、半ば消費者をだまして購入に導くことが「マーケティング」と呼ばれたりします。いわゆる「プロモーション」はマーケティングの一部でしかないので、その意味でも誤解を含んだ使い方なのですが、それはここでは置いておきましょう。

こうした意味での「マーケティング」をたまに目にすることによって、マーケティング、もとい商品の存在をアピールすること自体が、ともすれば「悪」とされるような風潮があります。

もとより日本には「ものづくり信仰」があり、良いものをつくることこそが本質、それを広く伝えるのは次善策だ、とするような文化があります。商品が知られておらず、広告活動を余儀なくされるのは、三流のつくり手に与えられるペナルティだ、などとする痛烈な批判も最近では目にします。

廃業する酒蔵は「商品が悪い」のか

しかし、本当にそうでしょうか。

国税庁の『酒のしおり(令和2年3月版)』によると、2017年現在で全国には1580の日本酒酒造メーカーがあるといいます。銘柄数でいうと少なくとも倍以上にはなるでしょう。

さて、私たちはそのうちのいくつを知っているでしょうか? 獺祭、而今、十四代、真澄。特別に日本酒好き、というわけではない私がパッと思いつくのはそれくらいです。

知られていないことが三流のつくり手に与えられるペナルティーなのであれば、その他の日本酒はあまり美味しくないのでしょうか。

そんなハズはありません。デパートや旅行先などで偶然出会った日本酒が、びっくりするほど美味しかったということはありませんか? 日本酒メーカーの中には老舗も多いですから、それぞれ何十年、何百年もかけて味を磨いてきたわけです。逸品が多いのもそのはずです。しかし、その大半を私たちは知らず、知らなければ当然、味わうこともできません。

日本酒ブームで活況に見えるかもしれませんが、その恩恵を受けているのはごく一部で、廃業する日本酒酒造メーカーは実は後を断ちません。2017年と2007年を比較すると、わずか10年の間に事業者の数は25%も減少しているのです。

本当に良いものをつくっていればプロモーションなんていらない。売れないのは純粋にあなたたちの商品がよくないからだ。廃業の憂き目を見た日本酒のつくり手に、そんな言葉を投げかけられるでしょうか? 少なくとも私にはできません

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