悲しい現実「目立つ奴ほど昇進する」の深い意味 「自己アピール上手の実力者」が山ほどいる世界

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しかし、くれぐれも誤解しないでください。実力より目立つことが重要だ、と言っているわけでは決してありません。

実力もないのに、ただ自分の存在をアピールだけしても仕方ありません。実力がなければ上司に良い印象を持たれることもありませんし、目立つこともできません。一時的にはできるかもしれませんが、すぐに化けの皮が剥がれるでしょう。

この割合は、「何が昇進の決め手になるか」です。昇進するには、仕事の実力があることがまず大前提です。その上で、実力者同士の横並びの中で、現実問題として最終的に昇進を左右するのが「印象」と「目立っていること」だ、というわけです。

「そんなのはおかしい、不条理だ」と思う方は、自分が日本酒を選ぶ場面を思い出してみてください。1580ある酒造メーカーの、倍以上のブランドの中から、完全に実力=味だけで日本酒を選ぶことができるでしょうか? そんなことは不可能か、そうではなくても著しく非合理でしょう。知名度や印象で候補を振るいにかけるのは、消費者としてむしろ合理的な行動なのです。

「良いものをつくる」と「それを広く知らせる」は車の両輪でした。そのどちらの努力も、決して怠ってはいけません。

個人のキャリアアップでも、それは同じことです。仕事の実力をしっかりと身につけたのなら、あとはきっと誰かが自分を見出してくれる。残念ながら、そんな「おとぎ話」のようなことは滅多に起こらないのです。

ライバルは皆「実力」と「アピール」を兼ね備えている

もちろんキャリアアップのゴールは「昇進」「出世」だけではありません。誰もが出世を目指すべき、というのは完全に時代遅れな考えでしょう。

しかし、どのようなゴールを見据えるにせよ、そこにはライバルがいます。実力、印象づくり、目立つこと。そのいずれの努力も怠っていないライバルがいるのなら、実力だけでは勝ち目がないのは明らかです。

深夜の原宿のファミレスで思考停止に陥ってから、20年近い月日が経ちました。大好きな先輩だったソフトな煉獄さんを引っ張り上げられるほど、偉くも大人物にもなれてはいません。

しかし、今では、当時の自分にかけてあげられる言葉を持っています。それをこの場を借りて若い人たちに伝えることで、面倒見の良い煉獄さんから受けた恩を「ペイフォワード」させてもらいたい。そういう思いでこの記事を執筆させていただきました。

井上 大輔 マーケター、ソフトバンク株式会社 コミュニケーション本部 メディア統括部長

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いのうえ だいすけ / Daisuke Inoue

ミュージシャンを志すも挫折。小さな広告会社でプランナーの仕事を始める。当初はまったく仕事のできないお荷物社員だったが、マーケティングの英知から学んだ「仕事とは人の役に立つこと」という思想に目覚めて以降、仕事にかぎらずあらゆる場面で「必要とされる」ようになる。

以降ニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディジャパンなどでマネージャーを歴任。ヤフー株式会社MS統括本部マーケティング本部長を経て現職。

雑誌・Web媒体への寄稿や講演会・セミナーへの登壇多数。NewsPicksアカデミアプロフェッサー。著書に『デジタルマーケティングの実務ガイド』(宣伝会議)など。

 

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