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世界を旅する写真家が見た「ヒマラヤ」の正体 悪夢のような極寒や、10年に1度の大雪も降る

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明るいうちにベースキャンプへ下山することを考えると、ここで引き返すしかない。下りはロープを頼りに垂直な壁をテンポよく下っていく。この懸垂下降時にオーバー手袋を外して登攀器具をたびたびいじったので、そのときは気付かなかったが、寒さで指先がしびれてしまい、今も両手中指の先の感覚が戻らない。

必ずもう一度あの山に登りたい

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せきも忘れかけたときにぼくの胸をノックする。東京に帰り着いたのに、身体の端にアマダブラムの感触が明確に残り続けているのである。登頂した後ならそれも喜びに結びつけられるかもしれないが、完敗して帰ってきたために指先からあの二度と体験したくない底冷えのような寒さを思い出す羽目になる。

必ずもう一度あの山に行こう。あの先にあったもう一つの山に是が非でもよじ登ろう。少なくともしびれた指先の感覚が元に戻るまでは、そう強く思い続けるに違いない。

身体とも直結する厄介な記憶をひっくり返すためにも、頂きに立つしかないのだ。登頂はそんなに重要なことではない、と思い続けてきたが、やはり頂きに立つことにこだわるべきなのかもしれない。今はそう考えている。

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