視聴率〇%のネット記事が的外れで無意味な訳 追い込まれたテレビがついに変わり始めた
もう1つ、テレビ業界の変化とメディア報道のあいまいさがわかる象徴的な例をあげておきましょう。
今年1月4日、日本テレビが2020年(2019年12月30日~2021年1月3日)の年間個人視聴率で、10年連続三冠王を獲得したことが大きく報じられました。三冠の内訳は、全日(6時~24時)が4.6%、プライム(19時~23時)が6.8%、ゴールデン(19時~22時)が7.1%でしたが、これらを見て「あれっ?」と戸惑った人が多かったのです。
「視聴率ってこんなに低かった?」と思った人へ
その理由は、前年まで年間個人視聴率ではなく、年間世帯視聴率で発表されていたから。ネット上には、「日テレは10年連続だったっけ?」「視聴率ってこんなに低かった?」という声もあがっていましたが、実際のところ昨年まで日本テレビが年間世帯視聴率で6年連続三冠王を獲得していました。
今回の発表からいきなり変わり、しかもそのことを読者に説明するメディアはほとんどなかったのです。「他の記事はこれまで通り世帯視聴率中心であるにもかかわらず、三冠王の発表だけは個人視聴率ばかり」という矛盾も含め、各メディアのアバウトさを感じさせられました。
ちなみに、2020年の年間世帯視聴率で日本テレビは、全日の8.5%とゴールデンの11.7%がトップだったものの、プライムは11.4%のテレビ朝日がトップで二冠止まり。しかし、7年連続の世帯視聴率三冠王を獲得できなかった日本テレビは、個人視聴率でトップであり、さらにコア層の個人視聴率では断トツトップであることから、そのことをまったく気にしていないのです。
一方のテレビ朝日も、「日本テレビの三冠を阻止した」と喜んでいるわけではないでしょう。実際のところテレビ朝日は、コア層の個人視聴率が日本テレビ、TBS、フジテレビに次ぐ四番手であり、広告収入面での不安を抱えていますし、世帯視聴率を獲得するために高齢層向けの番組を制作し続けてきたツケを実感しているはずです。
スポンサーが10~40代の個人視聴率が高い番組を求めている以上、指標として優先されているのは、コア層の個人視聴率であり、全体の個人視聴率は二の次にすぎず、世帯視聴率に至っては参考程度。日本テレビが10年連続で獲得している年間個人視聴率の三冠王も、「勲章」や「ブランディング」という要素こそあるものの、営業的には絶対的な意味があるものとは言えないのです。
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