ドラえもんの原っぱに「土管」があった深いワケ 実は日本の「トイレ」の歴史と関係している

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藤子・F・不二雄さんの漫画『ドラえもん』で描かれている昭和時代の原っぱには、たいていコンクリート製の土管(厳密には粘土で焼かれたものを「土管」といい、コンクリート製のものは「ヒューム管」)が置かれている。キャラクターの、のび太やジャイアンをはじめ子どもたちは土管に上ったりくぐったりして遊んでいる。女の子は土管を家に見立てて、中でおままごとをしている。

あれは東京中で下水道工事が行われていた時代だからこそのシーンだ。実際に、当時はあちこちで土管を見た。地中に埋められる前の土管が原っぱに置かれていた。

下水道がないのに水洗の理由

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練馬区は下水道設備が遅れていたが、いわゆる「団地」と呼ばれていた公団住宅や経済的にゆとりのある家には水洗トイレがあった。

下水道がないのに、なぜ水洗だったのかというと、下水道や浄化施設の代替えとして「コミュニティプラント(小規模下水処理装置)」、通称「コミプラ」が設置されていたのだ。

コミプラは国が市町村に義務付ける一般廃棄物処理計画のなかの1つで、公団住宅のような複数の家庭が共同で使う"合併処理浄化槽”のこと。各家庭の生活排水や屎尿を処理する。では、砂町汚水処分場で処理しきれなかった屎尿はどうしていたのだろう――。当時は、海洋投棄、つまり海に捨てるしかなかったのだ。

神舘 和典 ジャーナリスト

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こうだて かずのり / Kazunori Koudate

1962(昭和37)年東京都生まれ。音楽をはじめ多くの分野で執筆。『墓と葬式の見積りをとってみた』『ジャズの鉄板50枚+α』『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』など著書多数。

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西川 清史 文藝春秋前副社長・編集者

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にしかわ きよし / Kiyoshi Nishikawa

1952(昭和27)年生まれ。和歌山県出身。上智大学外国語学部仏語学科卒業後、77年文藝春秋入社。「週刊文春」「Number」編集部を経て「CREA」「TITLe」編集長に。2018年副社長で退職。

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