「男に産休?」と茶化す人が知らない超大事な話 赤ちゃんとの触れ合いが「父親になる」第一歩だ

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生物学的に考えると、男性の育児休暇制度は積極的に利用したほうがいい?(写真:topic_kong/PIXTA)

2020年12月、厚生労働省は、働き手に育休の取得を個別に働きかけることを企業に義務づける法律を策定する方針を固めたと発表しました。

さらに、男性向けの「産休制度」も新設するとのこと。育児のための休業期間である「育休」ではなく、お産のための休業制度である「産休」です。いままでは実際に分娩する女性にしかなかった制度です。子どもが産まれてから8週間に限り、4週間の取得が可能になります。2回までの分割も可能です。

これは、夫婦での子育てをスタートするにあたって、非常に大きな効果が期待できるしくみだと思います。出産直後のこの時期に、男性が赤ちゃんと密接に触れ合うことには、父親としての自覚を、意識のレベルのみならず物理的なレベルで発動する可能性があるのです。

一般に、女性は体が変化して母親になっていくのに、男性の体は親になっても何も変化しないと考えられがちです。一方、拙著『パパのトリセツ2.0』でも紹介していますが、父親になった男性の脳の中では物理的な変化が起こっている可能性が高いことを示す研究結果があります(Paternal recognition of adult offspring mediated by newly generated CNS neurons/nature communications/2010年5月9日)。

「パパスイッチ」というのは、単なるたとえではなく、どうやら本当にあるらしいのです。

マウスの父親の脳内で起きている変化とは?

カルガリー大学の神経学者が2010年に発表した研究結果によれば、マウスで実験を試みたところ、子どもの誕生後、父親マウスの脳には補足的なニューロン(神経細胞)が生じ、ホルモンも変化することがわかったとのこと。その研究者は、自分の子どもを識別する能力を獲得するためではないかと考えているようです。

そして、ここからが重要です。父親マウスが新しい脳細胞を獲得するのは、子どもとともに巣にとどまっているときだけで、赤ちゃんマウスが生まれた日に父親マウスを巣から離してしまうと、父親の脳に変化は現れないというのです。ということは、里帰り出産などで、産後すぐに赤ちゃんと離ればなれに暮らしてしまうと、パパスイッチは入りにくくなるということになります。これは大問題です!

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