飲料業界関係者はこう指摘する。「企業を訪れると面談時にお茶やコーヒーを出していただきますよね。コロナ禍以前は、ひと手間かけて茶碗、カップ、グラスに注いだものが出てきましたが、コロナ禍以降は小容量のペットボトルを出す会社が増えているんです。お茶の用意や後片づけの手間が省けるのはもちろんですが、衛生意識の高まりが最大の要因です。
2020年6~12月のサントリーの『伊右衛門 お茶どうぞ』(195mℓ)の出荷数量は、前年同期の約3倍となっています。同様に『サントリー天然水』280mℓペットボトルも出荷が3割強増えています。
キリンは『やわらか天然水』(310mℓ)が昨年は年間で前年超え、12月単月では前年同月比25%増と、こちらも好調です。飲みきりサイズの小容量タイプのペットボトル飲料は、カーディーラーやエステ店、美容院などでも導入するところが増えているようです」
今年は、コロナ禍による大学のオンライン授業増加や保護者の経済状況、生活コスト、感染リスク防止などを背景に受験生の地元志向が顕著になっていると指摘されている。上京して有名大学でキャンパスライフを謳歌する時代ではなくなってきている。これも1つの縮み志向だろう。
企業経営から個人のライフスタイルまで、さまざまな局面にダウンサイジングの波が押し寄せている。人口減にコロナ禍が拍車をかけた現象といえそうだが、この先、どんな影響を及ぼすのだろうか。
まず懸念されるのは、大企業の経営効率化に伴うリストラの加速や新規雇用の抑制が進むことだ。すでにコロナ禍による業績悪化でコロナ倒産は1000件に達し(帝国データバンク調べ)、リストラにも拍車がかかっている。しかも、その対象は中高年から30代へと低年齢化している。
経済活動との両立は難しい
こうした動きが加速することになれば、日本の国内経済、消費活動はますます縮んでしまう。医療費圧迫に伴う公立病院の病床削減など、医療態勢の縮小化も懸念されるところである。
一方、個人レベルでの縮み志向は、孤立化というネガティブな側面もあるが、従来の価値観の見直しにつながる可能性を秘めていると思う。ひとりで過ごす時間が増えることで、SNSに費やす時間だけでなく、映画、書籍をはじめとするコンテンツに触れる機会が増え、インプットが増大する。
家族と触れ合う時間も増える。その過程において、個々人がライフスタイルや人生、働き方などを顧みるようになれば、新たな思考、行動様式が生まれてくる可能性がある。会社や学校という集団から距離を置くことで、個としての可能性について思考し、これまで目を向けてこなかった地元・地域に軸足を置いたコミュニティーへの参加という形が出てくるかもしれない。
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