アップルストア表参道店の何がすごいのか? ケヤキと見事に調和した幻想的な店舗

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地下は、階段を降りて正面(写真奥)にジーニアスバーやワークショップのスペース、その反対側(写真手前)にアクセサリの展示とアイフォーン、アイパッドなどの契約カウンターなどがある

壁面を埋め尽くすアクセサリーは表参道らしいややファッション製に尖ったセレクトが施され、またワールドカップ期間中ということもあり、ブラジルや日本代表にちなんだ製品も並ぶ。こうしたところも、流行への敏感さをうかがわせる。

地下のバナーもやはりアイフォーン5c。鈍く輝く床面にカラフルなバナーの色が映り、外の光りをいっぱいに取り込む地上とは異なるやや幻想的な風景が広がっていた。 

売って終わりではない、ユーザーとの接点

アップルストアは、多くの人にとってそれまで用がなければ訪れることがなかったコンピュータストアの概念を変えた。米国ではきめ細かに出店され、一方日本では大きな商業エリアへの出店と方針は違う。ただいずれもこれまでコンピュータ関連の店舗がなかった場所に出店され、また専門的すぎない雰囲気作りから、通りかかった際に気軽に立ち寄ることができるようになった。

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厳選され、入れ替えもされるアクセサリは買ってからの楽しみを広げてくれる。写真は、アップルが買収したビーツエレクトロニクスのヘッドフォンとアイフォーン5c

また、表参道店では地下に揃えられた厳選されたアクセサリ。アイポッドの頃からヘッドフォンやケースなどのアクセサリを作るメーカーが爆発的に増え、アイフォーンやアイパッドに引き継がれた周辺機器のエコシステムは、既にアップル製品を購入している人たちがアップルストアを訪れる大きな動機となっている。

このアイデアは、デジタルのアクセサリ、つまりアプリによるエコシステムを作り出し、アイフォーンやアイパッドの大きな競争力の源泉になっている。

更にアップルストアにはいくつか訪れるべき理由を作り出している。ジーニアスバーと、ワークショップ機能だ。

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ジーニアスバー、セットアップコーナー、ワークショップコーナーはテーブルを囲んで椅子が配置される360度レイアウトになり、対面ではなく並んでサポートが受けられるほか、テーブルを囲んでワークショップに参加できる、距離の近さが特徴だ

ジーニアスバーは、アップル製品の不具合や修理の相談を受けることができるサポート機能だ。これまでバーという名の通りカウンター形式だったが、テーブルの周りに椅子が置かれるスタイルへと変わり、対面ではなく、並んで製品を同じ方向に見ながら相談ができるようになった。

また、ワークショップ機能は、個別の相談が受けられるOne to Oneに加えて、使い方を自由参加で学ぶことができるオープントレーニング、より専門的なソフトウエアの活用について聴講することができるPro Labsなどの、ワークショップ機能があり、こちらも銀座店のようなシアターのスタイルではなく、テーブルを囲んだゼミのような近さが、気軽な参加を誘う。

アップルストアは、自社製品を売って終わりではなく、楽しんで活用してもらうところまでサポートする場として、位置づけている。訪れる理由を作り、その理由がなくても気軽に入れて発見がある、そんなリアルに体験できる雑誌のような場になっているのだ。

期待される役割とは?

米国では、床面積あたりの売り上げが最も多いチェーンの座を確固たるものにしているアップルストア。気軽に入って新しい製品に触れる場所を提供したことは、全く新しいアイフォーンやアイパッドなどの製品をリリースしたときに『まず触れてもらう、理解してもらう』接点として、非常に有効だ。

アップルが今後、どんな製品カテゴリに参入しようとも、この気軽に触れられる場があることは大きな強みになるはずだ。

最新の開発者会議で発表された内容は、ポケットやカバンに入るテクノロジーが、家やクルマなど、生活に欠かせないものと連携する姿を見せた。今後、アップルストアでは、「生活の何が変わるか」という風景を見せることになるのか、について筆者は注目している。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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