「警察の裏金」暴露した男が語る内部告発の苦悩 顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い

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――道警は1万人ほどを擁する巨大な組織。大幹部といえども、簡単には改革に乗り出せなかった、と。

釧路方面本部長を最後として道警を退職したのは1995年2月です。その際、恒例になっている退任記者会見を求められましたが、考えるところがあり断りました。

そして4月、天下り先の安田生命の参与となり、そこを2003年4月に退職しました。道警からは再々就職の打診もありましたが、断りました。

道警を退職した年には、北海道庁の裏金が発覚しました。実は安田生命には道庁出身の幹部OBが2人いて、彼らは自分でお金を用立てて裏金を返還していたのです。その時点では、道警の裏金は発覚しておらず、彼らから「原田さんの組織(道警)は組織がしっかりしているからいいね」と言われたことを思い出します。

道警の退職に当たり、OBとの付き合いは、ほどほどにしようと思っていました。警友会(警察のOB組織)も加入せずにいようかと考えましたが、元方面本部長としての立場もあり、5年くらいは仕方がないか、と。それでも、いずれは退会しようとひそかに考えていました。

OBとのゴルフコンペはできるだけ避けた

当時、道警OBの間ではゴルフが盛んでした。多くのグループがあり、頻繁にコンペがありました。私も当時はゴルフを趣味にしていましたが、OBとのコンペはできるだけ避け、それまでまったく関係のなかった一般の方々たちとプレーを楽しみました。ゴルフ以外でも放送大学の受講や趣味のサックス演奏を楽しんでいました。

そして、2003年2月に警友会に退会を届けました。道警の裏金問題がニュースになったのはその年の秋。警友会を辞めた時点では、裏金が発覚するとは思ってもいません。

確かに多くのOBとの交際はなくなりましたが、退職直後からOBとは距離を置こうとしていたので寂しいとは感じませんでした。かえってサバサバしたのを覚えています。現在、回顧録を書いていますが、私の生い立ちや性格、在職中に感じていた警察という組織の姿も、告発に至る私の道筋に影響を与えていたのだろうと思います。

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