「警察の裏金」暴露した男が語る内部告発の苦悩 顔出し・実名の記者会見から17年経た今の思い

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――原田さんは警視長にまでなった大幹部だったわけです。長い警察官人生の中で、ご自身も裏金づくりに関わっていたのでしょうか。

裏金づくりに関与していなかった警察の人間は、当時、ほとんどいなかったでしょう。私自身、いろんな経験をしました。

原田宏二(はらだ・こうじ)/元北海道警察警視長。著書に『警察内部告発者』『警察崩壊』『警察捜査の正体』など(撮影:フロントラインプレス)

機動捜査隊長だったときは、ある部下が「私はもう、こんなことをしたくない」と言ってきた。

警察官がパトロールなどに出た際、時間や距離によって「日額旅費」という経費が出ることになっています。これを現場に渡さず、書類を偽造してキャッシュにし、裏金として管理していたわけです。

裏金の存在自体は私も知っていましたが、それまで、そうした訴えを受けたことはありません。でも、私は結局、何もできなかった。

架空の捜査ストーリーを必死に覚えた

こんなこともありました。道警本部の防犯部門(現・生活安全部門)で課長をやっていたとき、数年に一度の国の会計検査院の検査が入ることになった。ところが、出張旅費や捜査協力者に渡す捜査費など、経費は全部裏金になっていたわけです。全部ですよ。

予算を現金化して裏金にするために、架空の事件をでっち上げ、会計書類を作っていた。本当の事件捜査と会計書類上の記載はまったく一致していないのです。

例えば、出張旅費の支出書類に、詐欺事件で捜査員を東京に出張させたという記載があったとします。この場合、東京出張だけでなく、事件そのものがでっち上げです。それを会計検査院に指摘されたらどうするか。私は架空の捜査ストーリーをたくさん作り、メモを作成し、検査官のヒアリングに備えて必死で覚えました。

――そうした裏金づくりが警察内部で広く行われていた、と。

その通りです。

――警察庁から来ていた、いわゆる「キャリア警察官」も組織的な裏金づくりを承知していたのでしょうか。

もちろんです。私は警察庁に3年間出向していましたが、そこではキャリアの人たちが各都道府県との間で裏金のやりとりに関する話をしていました。私の机のすぐ横で、ふつうに電話しているわけです。

道警に復帰して3年後に初めて管理部門(警務課首席管理官)に就任し、キャリアの直属上司に仕え、以降、多くのキャリアの下で仕事しました。中には「さすが東大出」と思わせる明晰な人もいました。

次ページ若手キャリアの多くは裏金に何の遠慮もなかった
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