「75歳定年制」で日本はどうなるのか? 超高齢化社会は、本当に暗いのか

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現在、定年を65歳に引き上げている途中ですが、日本人の65歳以降のライフスタイルは、高齢者同士でワークシェアリングをしたり、ボランティアをしながらコミュニティを大切にするものが主流になってくるでしょう。

これから高齢者になる現役世代の私たちは、高齢化に伴う将来の社会保障の脆弱化や財政悪化による増税をかなり気にしています。しかし、たとえ退職年齢が上がっても、増税になっても、なんら心配はありません。なぜなら、75歳定年の下で、ワークシェアリングをしながら、若い人たちに仕事を伝えていくことが生きがいになるからです。

「75歳雇用」を視野に入れる企業も増加へ

すでに70歳まで雇用する企業が登場しています。例えば、東急リバブルは、優れたスキルを持つ社員を対象に、継続雇用年齢の上限を70歳に引き上げました。不動産仲介・販売業界では、それまで築いた人脈や営業スキルが重要であり、ベテラン社員ほど、そうした目に見えない財産を持っています。

これまでは、定年後、独立するなどして、そうした貴重な人脈やスキルが社外に流失していましたが、それらを若手社員などへ引き継がせたり、人材育成のサポートをしてもらうのが、70歳雇用延長のねらいのようです。

そのほかにも、大和証券グループ本社でも70歳までの継続雇用を導入しましたし、JFEスチールも65歳を超えた退職者を起用して若手育成役に投入するなどしています。こうした企業のように、雇用年齢を引き上げていく企業が増えていくでしょう。いまは70歳までの雇用ですが、将来的には75歳までの雇用を視野に入れた企業が増えていく流れにあります。

そして、ワークシェアリングの傍ら、余った時間で地域のコミュニティを大切にするといった生き方が主流になってくるでしょう。1人暮らしの老人が増加していくことを考えると、そういった社会との関わりを持つ生き方が、自然な姿になっていくように思います。

地域のコミュニティが失われて久しいといわれていますが、もう一度そこに回帰するわけです。これは社会として、むしろいい方向に向かうことになります。

最後になりますが、7月3日に新刊『2025年の世界予測~歴史から読み解く日本人の未来』(ダイヤモンド社)が発売されます。興味のある方は、ぜひご覧いただければと思います。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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