森元首相、「蔑視発言」に菅政権が及び腰のわけ 「失言王」の発言を軽視、後任候補に元五輪相も

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「森会長に辞職を求めるべきだ」との質問にも「内閣総理大臣にその権限はないと思っている」とかわした。政府としては、橋本聖子五輪担当相が4日、森氏に電話をして「こういう発言は絶対だめだ」と厳重注意したのみ。森氏の進退に踏み込む対応は避けている。

これに対し、野党側は森氏の辞任要求を強め、2月8日の衆院予算委でも改めて菅首相の決断を迫った。立憲民主党の早稲田夕季氏は「国益を損なうと考えるか」と質し、菅首相も「国益にとって芳しいものではない」と答弁せざるをえなかった。ただ、森氏の進退については「独立した組織委の判断を尊重すべきだ」と述べるにとどまった。

世論調査でも森氏の辞任を求める声が圧倒的で、野党側は「一刻も早く辞任すべきだ。対応が遅れれば政府、与党に対する批判になる」(共産党の小池晃書記局長)と警告。立憲民主党の幹部も「森氏が辞めるまで徹底的に追及する」と勢いづく。

「神の国」で知られる失言王

そもそも、森氏はかねて「失言王」として知られていた。首相時代も「神の国」や「(有権者は)寝ていてくれれば」など、失言は枚挙に暇がない。今回の発言についても、与党内では「いつものこと」(自民幹部)と軽視していたのが、事態を深刻化させた。

ただ、森氏の組織委トップとしての手腕や実績については内外で評価する声も少なくない。組織委の武藤敏郎事務総長は「5000人の組織が崩壊する」と続投を求めたとされるが、自民党内でも「余人をもって代えがたい」(世耕弘成参院幹事長)との声が相次ぐ。

森氏は首相経験者としての根回しや交渉力で、東京五輪開催に向けた道を切り開いてきた。会長辞任するとしても、森氏に代わって組織委という巨大組織のトップを務められる人物は極めて限られるのが実情だ。

森氏はメディアのインタビューなどで、「そもそも私は3年くらいでさっさと(会長職を)退いて、安倍さんに引き継げればと考えていた」と述べ、後任の会長候補として安倍晋三前首相の名前を挙げた。ただ、安倍氏には「桜を見る会」の私物化批判が続いており、自民内でも「火中の栗を拾える状況ではない」(細田派幹部)との見方が支配的だ。

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