森元首相、「蔑視発言」に菅政権が及び腰のわけ 「失言王」の発言を軽視、後任候補に元五輪相も
東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長である森喜朗元首相が発した女性蔑視発言が、内外から激しい批判を浴びている。発言を撤回・謝罪しつつ、会長辞任を拒否した記者会見の不遜な態度も火に油を注ぎ、森氏の最終的な進退も含め、事態はさらに混迷しそうだ。
森氏は会見で「辞めるつもりだったが、組織委の幹部から『やめてはいけない』と強く言われた」と説明。国際オリンピック委員会(IOC)は「(謝罪と撤回で)問題は終わった」と会長続投にお墨付きを与え、「あってはならない発言」と述べた菅義偉首相も、森氏続投で事態を収拾する構えだ。
会長辞任はきっぱりと否定
ただ、五輪憲章を否定するような差別発言に国際的な批判は広がるばかりだ。足元の日本オリンピック委員会(JOC、山下泰裕会長)の女性幹部からも批判が相次いでいる。苦境が続く菅首相にとって政権運営の新たな火種となり、五輪開催問題も絡んで、指導力が厳しく問われる場面が続きそうだ。
森氏の発言は2月3日のJOC評議員会で飛び出した。40分間に及ぶあいさつの中で、「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。(日本)ラグビー協会も今までの倍、時間がかかる。女性っていうのは競争意識が強い。まわりの発言した人に続いてどんどん言う。(理事会などで)女性の数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制を促しておかないと、なかなか終わらない」と述べた。
同評議員会はテレビやネットで中継され、SNS上では「とんでもない発言」「露骨な女性差別」などの書き込みが殺到した。
慌てた組織委は4日に幹部が森氏と協議し、同日午後に緊急の記者会見を行った。森氏は2分余りメモを棒読みし、「昨日の発言は、オリンピック、パラリンピックの精神に反する、不適切な表現であったと深く反省している。発言については撤回したい。不愉快な思いをされた皆さまには、おわびを申し上げたい」などと語った。
だが、進退を問われると、「辞任するという考えはありません」と会長辞任をきっぱりと否定。「私は献身的に一生懸命、7年間お手伝いしてやってきた。自分からどうしようという気持ちはない。皆さんが邪魔だと言えば、掃いてもらったらいい」と述べ、薄笑いも浮かべながらの得意の“森節”でけむに巻く余裕も見せた。
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