ソフトバンクGが反発する「勝手格付け」の是非 ムーディーズの情報発信に対し繰り返し批判

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ムーディーズの広報担当者は勝手格付けを続ける理由について、「(ムーディーズの規定方針に基づいて)当社は非依頼ベースで信用格付けを付与または継続することを選択できる。その理由として、非依頼信用格付けが市場参加者に有益な情報を提供すること、債券あるいは債券類似の証券の発行総額が大きいこと、などがある」と述べるにとどめた。

そんな状況の中、SBGは1年超ぶりに社債発行を再開した。同社は2月4日、機関投資家向けの公募劣後特約付き社債(ハイブリッド社債)を発行。公募社債は2019年9月以来だ。投資家の需要が高く、発行総額は当初予定していた1000億円程度を上回る1770億円となった。SBGの機関投資家向け社債としては過去最大規模になる。

ムーディーズの評価に関する質問なし

今回の起債による調達資金は、2016年9月に発行したハイブリッド社債の期限前償還に充てる方針だ。SBGは2021年度に任意の期限前償還分も含め、最大で1兆2216億円の社債償還を予定する。ここ数年の中でも高い水準だ。SBGは今回の起債におけるムーディーズの格付けの影響について、「影響はない。投資家からS&Pの格付けについては多くの質問を受けたが、ムーディーズの信用力評価に質問はなかった」(広報)としている。

今回は国内向けの社債のため、格付けは日本格付研究所から「BBB」を取得している。ただムーディーズの勝手格付けを参考にする投資家が一定数いる以上、今後の資金調達に影響がないとは限らない。勝手格付けを「合理的な根拠のない見解」とするSBGに対し、「市場参加者に有益な情報を提供する」といって発信を続けるムーディーズ。両社の“攻防”はまだまだ続きそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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