郵便局員「お金の犯罪多発」の何とも呆れる実態 局長・部長ですら横領・窃取の犯罪に手を染める

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「件数の多さ、犯罪の内容、そして容疑者の役職の高さが気になる」と語るのは、郵便局と同じように、支店で多額の現金を扱うことの多いメガバンク幹部だ。

横領や窃取はバレやすい犯罪なのに「年に何十人も横領や窃盗をするのは異常」(同)。

横領や窃取は決算の締め日に不正が発覚することが目に見えているからだ。佐久局の例のように、警報装置がついているのをわかっているのに、あえて自局に忍び込むとは、通常では考えられない杜撰さだ。

金融機関での犯罪といえば、「インサイダー規制違反のように少し複雑なものが多いが、現金を盗むなど単純犯罪が多いことに唖然とする。それも郵便局長といった、銀行でいえば支店長クラスの高い役職の人がやっているのも気になる」(同)。

企業のコンプライアンスに詳しい野村修也・中央大学法科大学院教授も「普通の企業に勤めている人であれば、顧客から預かった財産に手を付けて、勤務先のブランドに傷が付くような犯罪には手を染めない」と指摘する。郵便局員の多くは元国家公務員で、身内の不始末は組織ぐるみで隠蔽するような役所体質も根強く残っている。「犯罪が発覚しても『どこかの局の人がやって、ばれてしまいましたね』と、他人事のような話になりがち」(野村教授)。

「どうして管理職の立場につけてしまうのか」

日本郵政の増田寛也社長は、リモートで行った今年1月28日の定例社長会見で、「大変申し訳なく、社会の役目を果たしていく企業としてこんな不祥事があってはお恥ずかしいしお粗末な限りでありまして、関係の皆様には申し訳なく思っています」と話した。

そのうえで、このように述べた。

「特に局長、部長、管理の立場にある人間が平然と犯罪に手に染めるようなことがありまして、大型の犯罪がやはりまだこの時点でもあるというのは大変お恥ずかしいし問題であると思います。厳格に処分等で対処するのは当然のことですけど、それを未然に防止するようなことがなぜ欠けていたのか。昨年、長野の佐久郵便局でも大型の被害が出る事件がありました。

引き出しの予定があったのでしょうけど、なぜ、罪を犯した人間以外の人間のチェックが効かなかったのか。どうして犯罪に手を染めるような人間を管理職の立場につけてしまうのか。これも猛省しないといけない。結果として局長や部長などの管理職が手を染めた事件は(昨年1年間で合計)2億円を超えている。そもそもこれは本当に犯罪ですから、多くのものは言語道断ですので、今後起こらないように、社員教育等々、それから仕組みとしての抑止を考えたいと思います」と増田社長は顔を引き締めた。

まさに言語道断。日本郵政の報道担当は「件数、金額ともに減少傾向にある」と言うが、横領・窃取の根絶にはほど遠い。横領や窃取の根絶は、郵便局の信頼回復にとって喫緊の課題ではないだろうか。

『週刊東洋経済』2月13日号(2月8日発売)の特集は「郵政崩壊」です。
山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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